在宅勤務の利用状況から見る郊外や地方移住の可能性

「第7回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」より

在宅勤務の利用状況から見る郊外や地方移住の可能性
(写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍以降の人口動態について総務省の住民基本台帳移動報告をみると、2014年以降初めて東京23区が転出超過となりました。新型コロナの影響で働き方に変化が生まれるなか、本記事ではニッセイ基礎研究所の坊美生子氏が、2021年12月にニッセイ基礎研究所が実施した調査結果をもとにコロナ禍以降の「郊外・地方移住」のニーズと今後の見通しについてみていきます。※本記事は、ニッセイ基礎研究所のレポートを転載したものです。

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    それでは、緊急事態宣言中やまん延防止等重点措置の発令中よりも、解除後や、収束後の本人希望では、なぜ出社・登校の頻度が上がるのだろうか。

     

    ニッセイ基礎研究所の上記の調査では、就業者(n=1,697)に仕事に関する不安を尋ねている。それによると、コロナの感染拡大前に比べて「在宅勤務による業務遂行上のストレス(コミュニケーションの取りにくさなど)」が「増加」「やや増加」と回答した人は計11%だった。

     

    職場における上司や同僚と仕事の相談や雑談をしたり、出張や営業活動の自粛によって、取引先などとコミュニケ―ションしたりする時間が減ったことで、仕事のしづらさを感じていると考えられる。

     

    また、「在宅勤務環境によるストレス(スペースの狭さやPCのスペックの低さなど)」が「増加」「やや増加」と回答した割合も計10.5%に上った。自宅で落ち着いて仕事をするスペースを確保できない、PCや周辺機器等がそろっていない等の理由で、仕事がスムーズに進まないことなどが考えられる。

     

    ただし、これらのストレス要因に対しては、例えば企業側がサテライトオフィスやシェアオフィスを活用したり、ビジネスチャット等の整備を進めることによって、環境を改善させられる可能性はあるだろう。

     

    例えば同調査では、サテライトオフィスやシェアオフィスについて、コロナ禍前に比べて利用が「増加」「やや増加」と回答した割合は、全国平均で4.1%(東京圏4%、京阪神4.5%、その他の地域3.9%)にとどまっており、コロナ禍後の伸びが小さい。企業側が今後、これらの整備を進める余地はあると考えられる。

     

    [図表5]在宅勤務によるストレス
    [図表5]在宅勤務によるストレス

    おわりに

    本稿で紹介した在宅勤務の利用率や出社・登校頻度は、上述したように、働く人や学生本人に対して、これまでの実績や今後の希望等を尋ねたものであり、企業や大学等が在宅勤務やオンライン授業の制度を継続するかどうかによっても変化し得る。

     

    しかし、コロナ収束後における完全在宅勤務や完全オンライン受講を希望する割合が、東京圏ですら1割にも届かないという結果からは、郊外や地方への移住ができる人が、限定的であることを示している。

     

    ただし、前章で述べたように、企業側が今後、在宅勤務がよりしやすくなるような措置を取るのであれば、在宅勤務に対するニーズが増える可能性があり、住まいの条件が、通勤通学による地理的制約から解放される人が増えるかもしれない。

     

    特に年度末は、子どもが学校や保育園・幼稚園を卒業・卒園したり、学年が変わったりする時期でもあり、転居を検討していた家族が実行に移す可能性もある。年度をまたいだ転出入の動向にも、注目する必要がある。

     

    冒頭で述べたように、コロナ禍によって人々のライフスタイルは変化し、住まいに「安心」や「快適さ」といった要素を求める傾向は強まっている。今後は「暮らしやすさ」と「働きやすさ」を両立できる住環境が求められており、郊外や地方移住に対する関心の高さは維持されるだろう。

     

     

    坊 美生子

    ニッセイ基礎研究所

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年2月24日に公開したレポートを転載したものです。

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