2022年1月分鉱工業生産指数・速報値について (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

生産は15業種中自動車工業など5業種が低下で、2ヵ月連続前月比低下

 

基調判断は先行き上昇見込みから、3ヵ月連続「持ち直しの動きがみられる」

 

一致CI3ヵ月移動平均前月差上昇も1月分前月差が下降で判断「足踏み」か

 

 

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・1月分速報値・前月比は▲1.3%と、新型コロナウイルス感染症急拡大や部材供給不足などの影響を受けて、2ヵ月連続で低下となった。季節調整値の水準は96.2で、21年10月の91.1以来の低い水準である。前年同月比は▲0.9%で3ヵ月ぶりの低下となった。

 

●1月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち電子部品・デバイス工業や生産用機械工業など、10業種が前月比上昇したが、自動車工業など5業種が前月比低下となった。低下の業種数は少なかったが、全体では低下に寄与した。

 

●経済産業省の基調判断は20年4月分・5月分で「総じてみれば、生産は急速に低下している」だったが、6月分で、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。7月分で下げ止まりがとれ、「生産は持ち直しの動きがみられる」となった。8月分では、「生産は持ち直している」に上方修正された。その後、21年7月分まで、「生産は持ち直している」で据え置きになっていたが、8月分では、19年1月分・2月分以来の、「生産は足踏みをしている」に引き下げられ、9月分・10月分では判断が継続となった。11月分では「生産は持ち直しの動きがみられる」に上方修正され、前回12月分に続き今回1月分でも2ヵ月連続で判断据え置きになった。

 

●先月発表された製造工業予測指数1月分は前月比+5.2%の上昇の見込みであった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値では、1月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.6%の上昇になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲1.5%~+2.7%になっていた。実際には、鉱工業生産指数の前月比が▲1.3%の低下になったが、これは製造工業予測指数を6.5ポイント下回る下落率だが、一方で試算値下限にあと0.2ポイントと迫る下落率になった。

 

●1月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲1.8%と4ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は▲1.2%と3ヵ月ぶりの低下になった。

 

●1月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲1.8%と5ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は+4.1%と5ヵ月連続の上昇となった。

 

●1月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲1.3%と4ヵ月連続の低下になった。前年同月比は+4.1%と5ヵ月連続の上昇となった。

 

●鉱工業全体の在庫循環の動きをチェックするために、縦軸に鉱工業在庫指数・前年比、横軸に鉱工業出荷指数・前年比をとった在庫サイクル図をつくると、20年7~9月期までは「在庫調整局面」の状態にあったが、20年10~12月期、21年1~3月期では「意図せざる在庫減局面」になっていた。4~6月期では「在庫積み増し局面」に入った。7~9月期では在庫が前年同期比+0.5%、出荷が前年同月比+4.2%で、引き続き「在庫積み増し局面」となった。10~12月分では在庫が前年同期比+5.0%、出荷が前年同月比+0.2%の伸び率になり、「在庫積み上がり局面」となった。21年1月(速報値)分では在庫が前年同期比+4.1%、出荷が前年同月比▲1.2%の伸び率になり、引き続き「在庫積み上がり局面」となっている。しかし、部材調達不足などによる生産の減少による影響が含まれていることなどから、しばらく動向を注視していくことが必要な局面だろう。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると2月分は前月比+5.7%の上昇、3月分は前月比+0.1%上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、2月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.7%の上昇になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲1.3%~+2.7%になっている。

 

●先行きの鉱工業生産指数、2月分を先行き試算値最頻値前月比(+0.7%)、3月分を製造工業予測指数前月比(+0.1%)で延長すると、1~3月期の前期比は+0.7%の上昇になる。また、2月分・3月分を製造工業予測指数前月比(+5.7%、+0.1%)で延長すると、1~3月期の前期比は+4.0%の上昇になる。ウクライナ情勢や新型コロナウイルスの感染急拡大の影響など、懸念材料があるが、今のところ生産指数は、10~12月期の2四半期ぶり前期比上昇の後、1~3月期も連続して前期比上昇になる可能性が大きそうだ。

 

(アニマルスピリッツ指標)

●経済産業省は製造工業生産予測指数からアニマルスピリッツ指標を作成している。21年6月調査結果で、アニマルスピリッツ指標(生産活動マインド指標:DI)は11ヵ月連続のプラスの数値となり、企業の生産マインドは強気超の状況が続いていたが、21年7月~22年2月調査結果ではDIはマイナスになっている。22年2月調査結果のDIは▲13.1である。22年1月調査結果のDI▲12.5から低下した。2ヵ月連続の悪化となった。

 

 

(1月分の景気動向指数・速報値予測)

●1月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.8程度と4ヵ月ぶりの下降になると暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、日経商品指数の2系列が前月に比べ改善しているが、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列が前月差マイナスに寄与するとみた。

 

●1月分の一致CIは前月差▲1.1程度と2ヵ月連続の下降になると暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、有効求人倍率1系列が前月と同水準とみた。投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月より改善している。生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、輸出数量指数の4系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●1月分で景気の基調判断は、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」継続になると予測する。予測通りだと3ヵ月後方移動平均は前月差は上昇になるが、前月差はマイナスになるため、「改善」に戻るための、「3ヵ月以上連続して、3ヵ月後方移動平均が上昇」という条件は満たさないとみられる。

 

●1月分の先行DIは44.4%程度と3ヵ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を下回ると暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の5系列がマイナス符号になるとみた。

 

●1月分の一致DIは100.0%程度と3ヵ月連続で景気判断の分岐点の50%を上回ると暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の全系列がプラス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年1月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

(2022年2月28日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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