部下が「自然と動きたくなる」ようにする
ここにはひとつの誤解があるように思います。
それは、「部下は思い通り動かせる」「社員は思い通り動かせる」という幻想です。
『人を動かす』(デール・カーネギー著/創元社)は世界的なベストセラーとして知られています。しかし、内容までしっかりと頭に入っている人がどのくらいいるでしょうか。
もしかすると、「人を動かす」という言葉がひとり歩きし、「リーダー=人をうまく動かせる人」という認識にすり替わっているのではないでしょうか。
人は機械ではありません。部下には、感情もあれば、個性もあります。行動力もアイデアだって本来持っています。
しかし、部下を無理やり動かそうとすることは、そういった本来部下が持っている力を根こそぎ奪い取るマネジメントになってしまうのです。
■どうすれば部下やチームは変わるか?
「部下を動かさないのはわかったけど、じゃあどうすればいいんだ?」
と思われたかもしれません。
やるべきことはシンプルです。
「動かす」ではなく「自然と動きたくなる」ようにするのです。
「それができれば苦労しないよ」「それができないから困っているんだ」と思われた方、少し待ってください。それが難しいからこそ、無理やり指示命令したり、厳しく指導したりして動かそうとしてしまうわけです。
そのやり方から脱却する方法をお伝えします。
主体的に行動する部下、最高のチームを作るには、2つの行動が不可欠です。
ひとつは、よいチーム構築に「必要なこと」に取り組むこと。
もうひとつは、よいチーム構築の足を引っ張っている「阻害要因を排除」すること。
私は前者を「プラス行動」、後者を「ゼロベース行動」と呼んでいます。
チームマネジメントに悩む多くの方は、能力も意欲も高く、真面目で仕事熱心です。だからこそ、昇進して管理職になったわけです。ですが、チームをよくしようと必死になって「プラス行動」にばかり取り組んでしまいます。
実は、よいチーム作りは「ゼロベース行動」をするだけでうまくいくことがあります。簡単にいえば、「チームや部下の邪魔をしない」ということ。
マネジメントにおいては、「何をするか?」と同じくらい、「何をしないか?」も大事です。
大平信孝
株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役