環境毒素の影響を抑えるには?身体に備わる「解毒力」
実際に、原因不明の症状で悩む患者さんを診察していると、これらの環境毒素が原因で起こっている場合も少なくはありません。そして、機能性医学に基づいて、環境毒素を解毒する治療を行い、身体のバランスを整えることで、症状が改善する例を多く経験してきました。
しかし、標準的な医療では、結果として起こってきた身体の異常を治療することに専念するため、体内に蓄積した環境毒素が、水面下でどのような影響を与え、体調不良の原因になっているかを考慮することがあまりありませんでした。
機能性医学では、このような水面下で起こっている現象にこそ、本質的な意味があると考えるのです。そして、環境毒素を解毒することで、身体のバランスが崩れ様々な体調不良を起こすことを防いでくれると考えます。
環境毒素が身体の中に入ってきたときに、それらを解毒する能力のことをデトックス力あるいは解毒能力と言います。
ここで、環境毒素を水に、私たちのデトックス力をコップに例えて考えてみましょう。
コップに水を入れたときに、そのコップの大きさがデトックス力の許容量を示し、その中に入っている水を環境毒素の総負荷量と考えることができます。
そしてこの環境毒素の総負荷量(水の量)が、身体のデトックス能力(コップの大きさ)を超えてしまったとき、コップから水が溢れるように、いろいろな症状や疾患を起こすのです。
このコップの大きさよりも水の量が少ないときはコップから水が溢れることがありませんから、私たちは元気に健康で過ごすことができます。ところが何らかの原因でこのコップの水の量がだんだん増えてきて溢れ出したとき、私たちの身体はいろいろな不具合を感じるようになるわけです。
あえて言うならば、環境毒素が入ってくる量を完全にゼロにする必要はなく、身体で解毒できる範囲内に抑えられればいいということです。
居直っているように思われるかもしれませんが、環境毒素をまったくゼロにすることができない現状では、その現象を嘆いたり、悲観的に考えるのではなく、コップから水が溢れないためにできることを考えるのが現実的だと思うのです。
これを腸と肝臓の関係から見ていきましょう。
■環境毒素を解毒する「2つの防波堤」…肝臓と腸
腸というのは、さまざまな環境毒素が入ってくる入り口の一つです。最近の研究で、腸管内に常在する腸内細菌叢(そう)や腸管粘膜にはこれらの環境毒素を解毒する作用があると分かってきました。私たちのデトックスをつかさどる非常に重要な器官で、第1の防波堤であるということができます。
そしてその第1の防波堤をすり抜けて環境毒素が身体の中に入ってきても、肝臓という第2の防波堤がこの環境毒素を解毒し、胆汁を通じて再び腸の中に排出し、最終的には便の中に排出するのです。
この腸管と肝臓の2つの防波堤を溢れ出ることがなければ、環境毒素が身体に炎症を起こすことはないと考えていいでしょう。
■「腸内環境を整え、肝臓の解毒機能を高める」ことが大事
では、環境毒素の影響から逃れるためにはどうすればいいのでしょうか。
何よりも身体に入ってくる環境毒素の量をできるだけ減らすということが大事です。デトックスというと普通は出す量を増やすというふうに考えられがちですが、入ってくる量を少なくするということも広い意味でのデトックスであるということができるでしょう。
そのためには第1の防波堤である腸内環境を整えることが非常に重要です。ところが腸内環境が悪化し、腸管のバリア機能が低下すると、そこから環境毒素が門脈に入って肝臓に流れ込んでくるのです。
そして環境毒素の量が肝臓のデトックス能力を超えると、コップから水が溢れるように大量の毒素が全身に回り、全身の細胞を障害してBAMPを引き起こし、「自然炎症」の誘因となるのです。そうならないためには第1、第2の防波堤のデトックス機能を高めることが大事です。
腸内環境を整え環境毒素ができるだけ体内に入ってこないようにし、肝臓の解毒機能も高める。そのようにして環境毒素が全身に回らないようにすれば、自然炎症を最低限に抑えることができるということが分かっていただけたと思います。
次回は、環境毒素の防波堤になる「腸内環境」と「肝臓のデトックス機能」についてどのようにすれば高めることができるのかを具体的に見ていくことにしましょう。
小西 康弘
医療法人全人会 小西統合医療内科 院長
総合内科専門医、医学博士
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