※写真はイメージです/PIXTA

10年以上前から「企業全体の約7割が赤字」という異常事態が続く日本。全体の99.7%を占める中小企業が低生産性に陥っているために、その企業が赤字に苦しむばかりか、国全体の労働生産性を下げる要因にもなっています。しかし、中小企業が日本経済の足かせとなっている一方で、中小企業の存続・発展に国の将来がかかっていることも忘れてはいけません。中小企業の課題は、国全体の課題。それを痛感させられる危機的状況として、今回は「大廃業時代」について見ていきましょう。税理士の三反田純一郎氏が解説します。

誰も気が付かなかった「危機的状況」

■「自社の価値を理解できている経営者」はごく少数

「うちの会社って周りの会社に比べてどんなものでしょうか?」税理士としてこれは本当に経営者からよく聞かれる質問です。まず、自社の財務諸表に関しても売上高や当期利益といった損益計算書面以外の数字について理解している経営者が圧倒的に少ないと感じます。近年、以下のような経営者は本当に多くいます。

 

①永らく過当競争にさらされ、自社の優位性や先行きが見えなくなっている。

②周りから勧められるまま過度な節税をした結果、本来の利益が読めない。

③社員に劣悪な労働環境を強いたうえでの利益を本来の利益と誤認している。

 

さらに、自社の価値を客観的に把握して、社内外の人に正確に伝えられる中小企業の経営者は、残念ながらほとんどいません。なぜこのようになってしまったのでしょう?

 

一つは、本来であれば価値を生み出す資産の蓄積ができていないような企業であれば、市場からの撤退を余儀なくされるものですが、日本では、国の過度な中小企業保護政策により大多数の資産蓄積の無い企業が残ってしまったからです。

 

さらに怖いのは茹でガエルのように数十年にわたり、国の「現状維持」施策に浸かりすぎた中小企業では、そうした事態が少しずつ進んでしまったために、誰もこの危機的状況に気づかないままでした。その結果、経営者自身が自社の現状認識や、これからの経営環境を直視することをせず、漠然とした不安はあるものの、価値向上に向けた取組みを開始する決断をいつすればよいのかという動機付けのタイミングを見失ってしまったのです。

 

その証拠に私の目に映るのは、資産の蓄積が本当に少なく、今すぐにでも抜本的な経営改善に取り組まなければ廃業に追い込まれかねないような企業の経営者であっても、何かしらの形で少しでも資産を増やそうとしたり、少しでも固定費を削減しようとすることに必死になろうとしていない姿です。

 

そして、そのような企業が銀行の言われるがままに、保証協会付き融資という形で、返済できるあてもない運転資金を借り入れて何事もなかったかのように事業を継続するのです。本業が赤字でも国の税金で保証を付けるのなら、銀行はリスクをほとんど取ることなく融資ができます。銀行には融資実績というメリットが、企業は延命を図ることができるというメリットがあり、双方の利害が一致します。経営改善が待ったなしの企業でもこの公的融資が受けられてしまい、経営者が経営改善する機会を逸する姿がまさに日本型中小企業の経営の機能不全に陥っている典型例です。

 

全体の構図を見ようとせず、自行の利益のためにこのような融資の仕方をする銀行も罪深いと思いますが、銀行が変わることを期待しても仕方ないですし、何より融資を受けてしまう経営者に問題があります。

 

■経営者は「あまりにも薄すぎる危機感」を脱却しなければならない

必要なのは、資産の蓄積に関して「現状維持」ではダメで「今すぐにやらないといけない」といった危機感に揺り動かされた動機付けです。

 

自社の現在の資産価値やこれからの資産の価値向上についての危機感の圧倒的な欠如から経営者は脱却しなければなりません。

 

 

三反田 純一郎

税理士

宅地建物取引士

 

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※本連載は、三反田純一郎氏の著書『会社の資産形成 成功の法則』(中央経済社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

会社の資産形成 成功の法則―「見えない」資産を築く最強の戦略

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三反田 純一郎

中央経済社

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