(写真はイメージです/PIXTA)

被相続人と同居をしていた家族などが、勝手に被相続人の財産を使ってしまう「相続財産の使い込み」。証拠がない場合、使い込んだ人が認めない限り、相続財産を取り戻すのは難しくなってしまうのですが、それでも対処できるケースも存在します。本記事では、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が、「相続放棄の使い込み」に関して、対処法や予防策を紹介します。

相続財産の使い込みが発覚…取るべき対処法は?

続いて、相続財産の使い込みが発覚した際の対処方法を紹介しましょう。使い込みは、相手が認めない場合も多く、本人同士での解決が困難な場合が少なくありません。そのため、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

 

①当人同士で話し合いをする

当人同士の話し合いで解決できるのであれば、それに越したことはありません。

 

たとえば、使い込みを疑ったものの、相手方に確認したら被相続人の家をリフォームした費用であることが判明し、その証拠も残っていたような場合です。

 

また、相手方が素直に使い込みを認め、その分は遺産分割協議で取り分を減らすことに合意するような場合もあるでしょう。

 

②遺産分割調停をする

当人同士での話し合いがまとまらないのであれば、遺産分割調停での解決を試みます。
遺産分割調停とは、調停委員の立ち合いのもと、家庭裁判所で行う話し合いのことです。

 

以前は、使い込まれた財産はすでに遺産としては存在しないことを理由に、遺産分割調停の対象とすることは認められていませんでした。

 

しかし、2018年に成立した改正民法により、現在は使い込んだ相続人以外の相続人が全員同意すれば、相続開始後に使い込まれた財産を遺産分割調停などの対象とできることとなっています。

 

ただし、相続開始前の使い込みは、従来どおり不当利得返還請求などで解決することが必要です。

 

③訴訟をする

相手方が使い込みを認めないなど話し合いでの解決が困難である場合には、訴訟で解決することとなります。

 

訴訟での解決には次の2つのパターンがありますが、どちらを選択すれば良いのかは状況により異なります。依頼する弁護士とよく相談して決めると良いでしょう。

 

〇不当利得返還請求

不当利得返還請求とは、法律上の原因がないにもかかわらず利益を得た人から、その受けた利益を返還させるための請求です。相続開始前後で勝手に遺産を使い込むことは、不当利得に該当すると考えられます。

 

不当利得返還請求の権利には時効があり、その時効は次の通りです。

 

権利を行使できることを知ったときから5年
権利を行使することができるときから10年

④不法行為に基づく損害賠償請求

不法行為とは、故意または過失によって相手に損害を与えることです。相続開始前後で勝手に遺産を使い込むことは、不法行為に該当する可能性も高いといえるでしょう。

 

不法行為に基づく損害賠償請求権にも時効があり、その時効は次のとおりです。

 

損害及び加害者を知ってから3年
不法行為のときから20年

⑤遺留分侵害額請求をする

相手方が使い込みを認めず、また使い込みについての確固たる証拠もない場合は、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求で相続財産を取り戻すことは困難です。この場合は、次の手段として遺留分侵害額請求を検討します。

 

遺留分侵害額請求とは、子や配偶者など一定の相続人に保証された取り分である「遺留分」を侵害された場合に、遺留分侵害額相当分を金銭で支払うよう請求することです。

 

遺留分は、遺言による遺贈などのみならず、一定の生前贈与も対象となります。そのため、相続が起きる前に被相続人から一部の相続人に渡った金銭が勝手に使い込んだのではなく贈与だと主張するのであれば、その贈与に対して遺留分侵害額請求をする方法が考えられるのです。

 

遺留分侵害額請求の時効は、次のとおりです。

 

相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年
相続開始のときから10年
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