(※写真はイメージです/PIXTA)

活性酸素とは、化学的に説明すると「電子を失って(=酸化して)不安定になった酸素分子」のことです。活性酸素は身体の分子から電子を奪って、酸化させます。体内の分子が酸化すると本来の機能を果たすことができません。そして、電子を失った分子は周囲の分子からその電子を奪おうとするため、活性酸素がたくさん溜まると電子の奪い合いが連鎖し、身体の調子が次々と悪くなっていくのです。今回は活性酸素が発生する原因やそれを中和する仕組みについてみていきましょう。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書下ろしです。

炎症の連鎖反応を防ぎ、慢性疾患を予防するには?

■まず、「炎症の連鎖反応」が起こるプロセスをまとめると…

ここで、抗原となる物質が体内に認識されてから、免疫システムが働いて炎症の連鎖反応が起こる経過を簡単にまとめてみましょう。

 

DAMPのように身体にとって「異物」である物質が体内で認識されると、まずは免疫細胞のマクロファージが集まってきます。DAMPはもともと自分の身体に存在した成分ですが、変性することでもはや私たちの身体の一部として認識されなくなるのです。

 

マクロファージの表面には、異物を認識するセンサーが存在しています(TOLL様レセプター;TLRといいます)。このTLRが異物を認識して、身体の免疫反応を発動させます。すると免疫システムにシグナルが入り、炎症性サイトカインが作られ、異物排除のための炎症反応が進み始めます。炎症性サイトカインというのは、外敵の侵入を担当部署に知らせるアラームのようなものだと考えればいいでしょう。

 

さらには、この免疫細胞から放出された炎症性サイトカインを感知して、異物の発生した局所に、二次的に白血球やマクロファージなど、他の炎症担当細胞が集まってきます。知らせを受けた消防車やパトカー、レスキュー隊が動員されるようなイメージです。二次的に集まってきた炎症細胞からは別のサイトカインが放出され、局所の血流を増やしたり、異物をやっつけるための酵素や活性酸素が放出されたりして、免疫反応の連鎖が次々に進み、最終的に異物を排除するわけです。

 

慢性炎症が起こっている場所では、活性酸素が持続的に放出されるので、身体の中の活性酸素の量が増加し、通常量の抗酸化ビタミンや抗酸化物質だけでは中和できなくなるのです。

 

■慢性疾患を防ぐカギは「自然炎症の制御」にあり

このように、免疫システムに働きかけて免疫反応の連鎖を誘発し、活性酸素を発生させる物質を「デンジャー・シグナル(Danger Signal)」といいます。

 

私たちの身体にはこの「デンジャー・シグナル」を知るアンテナ(=自然免疫系センサー)が何種類も備わっています。

 

これまでは、外因である細菌やウイルスなどの成分が、「Danger Signal」として炎症を起こすと考えられてきました。いわゆる「感染」と呼ばれる状態です。

 

それと異なり、私たちの身体にある物質(DAMP)が原因となる場合を、これまで知られていた感染性の「炎症」と区別して、非感染性の「自然炎症」ということがあります。

 

外から侵入してくる病原体を感知するだけでなく、悪い生活習慣などで身体に溜まる「内なるストレス」も感知できるのです。

 

そして、この「自然炎症」が、身体に持続的な慢性炎症を起こし、がんや心筋梗塞、脳梗塞などの慢性疾患へと繋がっていくのです。

 

「自然炎症」の発見は、慢性疾患に対する概念を大きく変える事象だったといっても過言ではありません。

 

さらに驚くべきことに、この「デンジャー・シグナル」を感知するセンサーは、炎症細胞とよばれる白血球にだけにあるのではなくて、すべての細胞に備わっています。

 

体内のどこであれ、この仕組みが動き出すと、炎症性サイトカインを含むさまざまな体内警報物質が細胞内で作られ、炎症が始まります。

 

そして炎症によって細胞や組織が傷つくと、DAMPが細胞外に放出され、これがさらに自然免疫系センサーを刺激して、まるでドミノ倒しのように次々と悪い反応が続けて起こり、次第に全身に広がっていきます。

 

 

慢性炎症を制御するためには、主に身体の中で持続的に発生するDAMPを防ぎ、非感染性の「自然炎症」を抑えることが重要であることが分かっていただけたと思います。

 

生活習慣病を予防するためには、規則正しい生活習慣や食生活、適切な運動が大切だと言われていますが、このどれもが「自然炎症」を抑えるためなのです。

 

非感染性の「自然炎症」という概念はまだ新しく、分かっていないことが多いのですが、次の記事ではこの自然炎症を抑えるために、私たちに何ができるのかについて考えていくことにしましょう。

 

 

小西 康弘

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長

総合内科専門医、医学博士

 

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