85歳以上では「2人に1人が発症」…年齢別の発症予測
高齢になるとどの程度の割合で認知症の人は増加していくのでしょうか。
年齢別に認知症の人の割合をみると、65〜69歳では約3%ですが、年齢が5歳上がるごとに約2倍になっていることが分かります。85歳以上では約2人に1人が認知症であるとされています(図表2)。
2017年厚生労働省発表の「完全生命表」で、日本人の平均寿命は男性80.75歳、女性は86.99歳となり、過去最高を更新しています。
しかし一方で、人の手を借りず自立した生活が送れるとする「健康寿命」は、男女とも約10年短いという試算も出ています。健康寿命を短くする原因には、脳血管疾患や大腿骨折などさまざまな疾病が挙げられますが、認知症もそのなかの一つです。
まして85歳以上の高齢者の約2人に1人という高頻度での発症予測が出ているとなれば、晩年、認知症を患って過ごす人が2分の1強はいるということで、誰もがひとごとでは済まされない問題といえるでしょう。長寿大国ニッポンを脅かす、最も深刻な病気といっても過言ではありません。
軽症でも雇われず…「認知症=就業不可」の厳しい風潮
また、現代の日本社会では60代ならまだ第一線、70代でも、現役で働いたりセカンドキャリアを築いたりする人も少なくありません。認知症の大きな問題は、そうした労働力、労働意欲がある人の力まで奪ってしまうことです。
高齢者でも仕事を続けられる社会環境の充実が求められている一方で、いやおうなく仕事をやめざるを得ないのが認知症の怖い一面です。しかも、ほかの病気とは事情が異なり、たとえ軽症であっても働く機会が失われてしまうことが多い傾向にあります。
例えば、がんに罹患した場合、手術入院の間は仕事を休む必要がありますが、その後は通院しながら働くことが可能です。比較的進行した状態でも、薬物療法を受けながら就業している人がたくさんいます。もちろん個々の事例では、職場の受け入れ体制が整っていない、本人の体調が悪く仕事が続けられないというケースはあると思います。しかし、認知症の場合はそのような個々のケースを考慮する以前に、認知症=就業不可とされてしまう風潮が非常に強いのが現状です。
もっとも、昨今は、のちに述べる軽度認知障害(MCI)も知られるようになり、就業を続ける人が少しずつ増えてきました。しかしまだ稀なケースであると言わざるを得ません。
このような状況から、認知症患者の増加により、労働人口がますます減少していく恐れがあることも、日本にとっては深刻な問題といえるでしょう。