リウマチで手が不自由になってしまったお客様から「握力が弱くても使える、切れ味のいいピーラーはありませんか」とお問い合わせがありました。料理道具専門店の飯田屋はこの要望にどう応えたか。飯田屋6代目店主が著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)で明かします。

世界でも圧倒的にユニークなピーラーが誕生

西さんがすごいのは、その話を聞いて理解すると、すぐに本社の設計担当者に伝えてくれたフットワークの軽さです。飯田屋にはさまざまな会社の営業担当者が何百人も出入りしていますが、西さん以上に話の早い営業担当は一人もいません。

 

僕も西さんも「いい道具をつくりたい」という思いで一致していました。そこで僕がどうしてもやりたかったのが、1度ごと持ち手の角度を変えたサンプルをつくり、実際に切り比べて最適な角度を探し出すことでした。

 

1度ごとに角度が異なるサンプルとなると、すべて手作業でつくらなければならず、普通は面倒くさがってやってはくれません。

 

しかし、西さんは会社に掛け合って、僕のばかげていると思われても仕方がない要求に笑顔で応えてくれました。

 

その結果、27度でも28度でも29度でもなく、ぴったり30度が手にもっとも負担がなく、野菜の皮の細胞が潰れない最適な角度だとわかりました。刃を横に引けるので、指先に誤って刃が当たる心配もなくなりました。

 

怪我の恐れが少ないので、抜群に切れ味のいい刃を使用できます。だから、指を軽く引っ掛けて滑らせるだけで食材を切れるのです。また、従来のピーラーの刃の幅より少し広めにすることで、キャベツの千切りも楽にできるようにしました。

 

製造を担当してくれた川嶋邦照さんは、業界では知らない人がいないほど有名な日本最高峰の料理道具職人。これまで数々の名作ピーラーを生み出してきた神様のような人が、ピーラーに使用する刃としては世界でも極めて珍しい硬質の鋼材を使って、約2年にわたり試行錯誤を繰り返してできあがったのが「エバーピーラー」です。

 

切れ味に特にこだわった結果、野菜の皮をむくと表面がピカッと輝きます。輝くのは、野菜の細胞を潰していないからです。皮をむいた瞬間に輝くだけでなく、その野菜を冷蔵庫に入れ一晩置いても効果は長く持続します。

 

開発にあたって絶対に譲れなかった機能は、刃が交換できる点です。切れ味が悪くなったら使い捨てるのではなく、刃だけを取り替えられるようにしたのです。

 

人参、大根、じゃがいもの皮から、硬い皮を持つカボチャ、軟らかい皮のトマトまでどんな皮も楽にむけて、しかも替え刃式という業界常識とは一線を画す、世界でも圧倒的にユニークなピーラーが生まれたのです。

 

飯田 結太
飯田屋 6代目店主

 

 

※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

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