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●1月の投資部門別の売買状況を検証し、日経平均を月間で6.2%押し下げた投資主体を探る。
●第1週と第2週は国内勢と海外勢で売買交錯、第2週からは海外勢の先物売りが目立ち始める。
●その後、海外勢は現物と先物を売り越し下げを主導、日本株をみる上では、やはり海外勢に注目。
1月の投資部門別の売買状況を検証し、日経平均を月間で6.2%押し下げた投資主体を探る
2022年1月の日経平均株価は、米利上げの前倒し観測などへの警戒から、月間で6.2%安となりました。そこで今回のレポートでは、1月の投資部門別売買状況を検証し、下げ相場を主導した主体を探ります。対象は、個人、海外投資家、投資信託、事業法人、信託銀行、自己(証券会社の自己勘定)とし、現物および先物の売買代金(差額)を、週次ベースで確認していきます。
現物は、東京証券取引所が公表している投資部門別売買状況のうち、東京・名古屋2市場、1部、2部と新興企業向け市場の売買代金の差額合計です。先物は、大阪取引所が公表している投資部門別売買状況のうち、日経225先物、日経225mini、TOPIX先物、ミニTOPIX先物の売買代金の差額合計です。1月は、4日から7日が第1週、11日から14日が第2週、17日から21日が第3週、24日から28日が第4週となります。
第1週と第2週は国内勢と海外勢で売買交錯、第2週からは海外勢の先物売りが目立ち始める
実際の売買状況は図表の通りです。まず、1月第1週において、日経平均株価は週初に29,000円台を回復したものの、その後は失速し、週間で1.1%下落しました。海外投資家はこの週、現物を約3,000億円買い越した一方、自己は現物を約2,000億円売り越しました。そのため、週初の日経平均株価の上昇は海外投資家が主導し、その後の失速は、自己など国内勢の売りに押され、値がさ株中心に崩れたものと推測されます。
次に、第2週をみると、日経平均株価は12日にいったん上昇する場面もみられましたが、結局、週間で1.2%下落しました。この週は、個人投資家と自己が、現物を約1,700億円ずつ買い越しましたが、公的年金や企業年金の売買動向を反映するとされる信託銀行が、約2,200億円売り越しました。なお、海外投資家による現物の売り越し額は約730億円と、比較的少額となった一方、先物の売り越し額は約2,700億円に達しました。
その後、海外勢は現物と先物を売り越し下げを主導、日本株をみる上では、やはり海外勢に注目
そして、第3週、第4週で、日経平均株価の週間下落率は、それぞれ2.1%、2.9%に拡大しました。下げを主導したのは海外投資家で、現物の売り越し額は第3週で約3,000億円、第4週で約2,000億円となり、先物の売り越し額は順に約2,700億円、約3,200億円でした。一般に、海外投資家のうち、現物の取引主体は年金、先物の取引主体は投機筋とされますが、いずれも2週にわたって日本株を大きく売り越したことになります。
国内勢は、個人と事業法人が1月に現物を買い越した一方(それぞれ約6,700億円、約2,200億円)、信託銀行と自己は売り越しました(それぞれ約2,500億円、約2,600億円)。以上より、1月の下げを主導したのは海外投資家と考えられ、この先も日本株を見通す上では、やはり海外投資家の動向が注目されます。なお、海外投資家の買いを促しやすい材料として、米利上げの織り込み一巡や原油高の一服、ウクライナ情勢の安定化などが挙げられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年1月の投資部門別日本株売買状況』を参照)。
(2022年2月9日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト