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●4-12月期は現時点で2桁の増収増益、前年の反動という側面もあるが業績回復傾向は継続中。
●企業による今年度の業績予想は上方修正の動きが顕著、ただ、市場予想にはまだ届いていない。
●決算は総じて良好だが、米金融政策などへの警戒から、日経平均全体の押し上げにはまだ至らず。
4-12月期は現時点で2桁の増収増益、前年の反動という側面もあるが業績回復傾向は継続中
足元では、3月期決算企業による2021年4-12月期の決算発表が続いています。2月7日時点で、東証株価指数(TOPIX)構成企業のうち、金融を除く771社(全体の約58%)が決算発表を終えました。2021年4-12月期の実績を確認すると、前年同期比で売上高は13.6%増、営業利益は48.4%増、経常利益は71.1%増、純利益は99.7%増となっています(図表1)。
製造業・非製造業の区分でみた場合でも、そろって2ケタの増収増益となっており、売上高と営業利益の伸びは製造業が上回った一方、経常利益と純利益の伸びは非製造業が上回りました。前年度の国内企業の業績はコロナの感染拡大の影響で大きく低迷したため、今年度の好業績はその反動という側面もありますが、業績回復の傾向自体は続いていると判断されます。
企業による今年度の業績予想は上方修正の動きが顕著、ただ、市場予想にはまだ届いていない
次に、企業による2021年度の業績予想について確認します。業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したところ、前年度比で売上高は8.6%増、営業利益は36.9%増、経常利益は40.1%増、純利益は71.3%増という見通しが示されました(図表2)。業績予想の改定率は、順に+2.8%、+8.5%、+16.3%、+23.6%であり、全体として上方修正の動きがみられます。
まだ途中経過ではありますが、経常利益と純利益の改定率が2桁のプラスとなっていることは、株価に好材料と思われます。しかしながら、2021年度の業績予想について、市場の予想値と企業自身の予想値との乖離率をみると、売上高は-0.2%、営業利益は-4.1%、経常利益は-3.6%、純利益は-2.2%となっており、企業自身の予想値は、まだ市場の予想値に届いていない状況です。
決算は総じて良好だが、米金融政策などへの警戒から、日経平均全体の押し上げにはまだ至らず
次に、進捗率を確認します。進捗率とは業績予想に対する実績の進捗度合いを示すもので、一般に、売上高や純利益などの四半期累計値を、企業による通年度の業績予想で割って求めます。4-12月期の場合、進捗率は75%が目安となりますが、2月7日時点で、売上高は74.4%、営業利益は81.2%、経常利益は85.6%、純利益は87.5%でした。製造業・非製造業の区分では、非製造業の利益進捗率が、相対的に高くなっています(図表1)。
なお、日経平均株価の動きをみると、決算発表が本格化する前の1月21日から2月7日までの期間、1.0%下落しています。国内企業の2021年4-12月期決算は、総じて良好な内容ですが、米金融政策の正常化前倒し観測や、ウクライナ情勢の緊迫化などが、市場でより材料視されているため、好決算銘柄を個別に物色する動きにとどまり、まだ日経平均株価全体を押し上げるには至っていない状況です。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年4-12月期決算の途中経過と株価の反応』を参照)。
(2022年2月8日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト