「塾なし」受験で子どもが大きく成長できる

しかし、唯一いえることは、塾で敷かれたレールでなく、家族のサポートで塾なし受験をすることによって、子どもは自分で考える頭と努力するたくましさを身につけていきます。高校受験だけでなく、その先の人生の荒波でさえ、乗り越えていく力が身につくでしょう。

子どもは家族に感謝をしながら、自ら幸せだと思う人生を送るために、懸命に努力し始めます。こうなれば、「子育て」という長旅の着地点が、その先に見え始めます。そして、社会の基盤である家族という単位がより強固になって、幸せがかたちづくられるのです。

塾任せにしないで、親子で「塾なし受験」をしてみませんか？

これを乗り越えたときの成果は、親にとっても子どもにとっても本当に大きいのです！

■生きるための力

小学校の卒業を境に、中学生の勉強は「塾任せ」が主流になっています。しかし、我が子の教育に、ある日突然、線引きをする必要はありません。大切なことは、「塾任せにしない」こと。家庭での学習を続けることで、子どもの力はメキメキと伸びていくでしょう。

私たち夫婦は、もし通塾して塾主体で受験が進むならば、それは息子の成長や将来を他人に任せてしまうことのように感じました。塾にとって、あなたのお子さんは生徒の一人にすぎませんが、あなたにとってはたった一人の存在。唯一の存在の未来につながる受験について、どちらが心底考えられる状況か、一目瞭然なのです。

そのためには、自分たちで受験に向かう「方法」を知る必要があります。そして、この連載には、「塾なし」高校受験のノウハウが詰まっています。

塾なし受験をするメリットは、合格を勝ち取るだけでなく、「本当に大切な生きる力」が付録のようにたくさんついてくることです。受験の結果以上に、塾なし受験を通して子どもが大きく成長できる、このことが何よりも大きな収穫になるのです。

私たち親世代が受けた教育は、時代に合わせて見直され、教育の現場は日々、進歩しています。そのため、この本は親がきちんと家庭教師をしましょう、というオチではありません。塾にいかずにどのように情報収集をして、どうやって自宅学習を続けて合格できたのか、その事実（＝ノウハウ）を中心に書きました。

教育は、社会を変えることができます。私たち家族の「塾なし受験」、この経験を多くのみなさんと共有できれば、主体的に自ら考え、努力できる子どもが日本にもっと増えていくのではないか。そして、その子どもたちが数年後、日本を力強く引っ張っていってくれるのではないかと期待さえしています。

我が家は、本書の主人公である長男と小学6年の長女、私たち夫婦の4人暮らし。私はライター仕事の傍ら、公立の小学校で学習支援のコーディネーターとしてお手伝いもしています。この本を手にしてくださったみなさんと同じ、家庭と仕事と子育てで日々慌ただしく、あっという間に一日が終わります。疲れる日も大変なこともありますが、夫婦・家族で話し合いながら、協力して日々を過ごしています。

今の社会が抱える教育の問題は、子育て中の私にとっては自分ごと。きっと、本連載を読んでくださるみなさんにとっても同じでしょう。さまざまな教育問題が取り上げられる中、私たちが「塾なし受験」を通して得たことをもっと知ってもらいたい、と強く思うようになりました。

受験生のいるご家庭はもちろん、子育て中の多くのお父さん・お母さんに、「塾なし」受験生の親として過ごした一年間をお伝えすることによって、塾や受験、子どもの教育について考えていただくきっかけになれば幸いです。

「塾は当然いくもの」という考えを疑い、受験生のいるご家庭のひと組でも多くが、親子で「塾なし受験」にチャレンジしていただければうれしく思います。
 

塚松美穂
ライター・教育アドバイザー
学習支援コーディネーター