「著作権」の対象にならないものは…
次のようなものは、原則として著作権の対象とはなりません。
時事の報道:時事の報道は著作権の対象となりません。ただし、文章や表現に工夫がされたものは、著作権の対象となることがあります。
思想やアイデアそれ自体:著作権は表現されてはじめて生じる権利です。頭のなかで考えているだけの状態では、著作権の対象となりません。
ありふれた表現や極めて短い文章:ありふれた表現やごく短い文章は著作権の対象となりません。ただし、どの程度であればこれに該当するのかについて明確な線引きがあるわけではありませんので、安易な判断は禁物です。
「著作権(財産権)」と「著作者人格権」の違い
著作権は、著作者人格権と狭義の著作権(財産権)に分類できます。それぞれの概要は次のとおりです。
著作者人格権とは
著作者人格権とは、著作者自身が精神的に傷つけられないようにするための権利です。
そのため、著作権自体が譲渡されたとしても、この著作者人格権は著作者に残存し、著作者が死亡すれば消滅します。
著作者人格権には、次のものが含まれます。
氏名表示権:著作物の公表に際し、著作者の実名やペンネームを著作者名として表示することや、著作者名を表示しないことを決める権利です。ただし、著作物の利用態様から見て著作者の権利を害するおそれがないときは、著作者名を表示しなくても構いません。
同一性保持権:著作物を勝手に改変されない権利です。ただし、やむを得ない改変などは認められています。
狭義の著作権(財産権)とは
狭義の著作権とは、著作権のうち財産的な側面に焦点を当てた権利です。著作権を譲渡したり相続したりした際には、この財産権としての著作権が移転します。
狭義の著作権の内容は、次のとおりです。
複製権:著作物を複製する権利です。
上演権・演奏権:著作物を公衆に上演したり演奏したりする権利です。
上映権:著作物を公衆に上映する権利です。
公衆送信権等:著作物をテレビやインターネットなどを通じて公衆に送信する権利です。
口述権:言語の著作物を公衆に口述する権利です。朗読や講演などをイメージすると良いでしょう。
展示権:美術の著作物や未発表の写真の著作物の原作品を公衆に展示する権利です。
頒布権:映画の著作物を公衆に頒布する権利です。
譲渡権:映画以外の著作物の原作品やその複製物を譲渡により公衆に提供する権利です。
貸与権:映画以外の著作物を貸与により公衆に提供する権利です。
翻訳権、翻案権等:著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化など翻案をする権利です。
二次的著作物の利用権:自分の著作物を原著作物とする二次的著作物の利用に関して、二次的著作物の著作権者と同じ権利をもつことをいいます。
著作物を利用したい…「転載」と「引用」の違いは?
著作物を利用する際には、転載と引用について正しく理解する必要があります。無断での転載は著作権を侵害する可能性の高い行為である一方、適切な引用であれば原則として著作者の許諾は不要であるためです。
適切な引用のルールは、次のとおりです。
・他人の著作物を引用する必然性があること
・かぎ括弧をつけるなど、自分の著作物と引用部分とが区別されていること
・自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること
・出所の明示がなされていること
これらのルールに合致しない場合には転載となり、無断で行った場合には著作権侵害となる可能性があります。
コンテンツ企画者必見!著作物を自由に使えるケース
下記に該当する場合には、著作物を自由に利用することが可能です。数が多いため、コンテンツ企画者が知っておくべき点に絞って紹介します。
私的使用のための複製:家庭内で仕事以外の目的のために使用する場合です。家族で聴くためにコピーガードのついていないCDを複製したり、家族に読ませるために雑誌をコピーしたりすることなどを指します。なお、企業内での複製は私的使用とはいえないとされているので、たとえば、雑誌の記事をコピーして部署内に配布する行為は原則として著作権侵害です。
引用:前述のとおりルールに則って適切に行う必要があります。
営利を目的としない上演等:顧客から料金を取らないのみならず、出演者などが無報酬である必要もあります。
時事問題に関する論説の転載等:特に禁止されていない限り、新聞紙や雑誌に掲載された時事問題に関する論説(学術的なものを除く)は、他の新聞、雑誌への転載や放送等が可能です。
プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等:プログラムの所有者は、自ら電子計算機で利用するために必要な限度でプログラムを複製したり翻案したりすることができます。
その他、教育目的での複製や裁判手続きのための複製、視覚・聴覚障がい者のための複製などは自由に行うことが認められています。
一般の企業が著作物を自由に使える場面は非常に限られていますので、注意しましょう。
「著作権」を侵害するとどうなるのか?
正しく理解せずに進めてしまい、万が一著作権侵害をしてしまうと、どのようなリスクが生じるのでしょうか?
損害賠償請求などを受ける
著作権侵害をした場合には、著作権者などから利用の差し止めを受けるほか、損害賠償請求を受ける可能性があります。
損害賠償額の考え方は著作権法に規定があり、侵害者が得た利益がそのまま損害額と推定されることもあるため、非常に高額となる場合も少なくありません。
さらに、著作者人格権をも侵害した場合には、謝罪広告の掲載など名誉を回復するための措置を請求される可能性もあります。安易な著作権侵害が高額な損害賠償などにつながることもあるため、注意が必要です。
罰の対象となる
著作権侵害をすると、上記の民事上の責任を問われるのみならず、場合によっては10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金という重い刑罰の対象にもなり得る点にも注意が必要です。
法人が著作権侵害をした場合には、その実行者が上記の処罰を受けることに加えて、場合によってはその法人にも3億円以下の罰金が科される可能性もあります。
社会的信用を損なう
著作権侵害をしてそのことが公となれば、企業の社会的信用を損なう可能性が高いといえます。
コンテンツ企画をする企業が著作権侵害をしたとなれば、以後の業務受注へも多大な影響が出てしまうことでしょう。
コンテンツ企画をする際には、著作権侵害をしないよう注意を払う必要があります。著作権につき正しく理解をしていなければ、意図せず侵害をしてしまうことにもなりかねません。
本文で記載したとおり、著作権侵害のペナルティは決して軽いものではありませんので、コンテンツ企画を行う際には、関係者全員が著作権についてきちんと理解しておくようにしましょう。
西尾 公伸
Authense法律事務所 弁護士
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