本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社の「オーストラリア株」最新レポートを転載したものです。

市場では年内のRBAの利上げ観測が根強い

利上げに慎重なRBAとは対照的に、市場では引き続きRBAによる年内の利上げ観測が根強い状態にあります。

 

ブルームバーグ集計の市場コンセンサス(1月27日時点)では、RBAは2022年10-12月に政策金利を0.25%へ引き上げるとの見方が大勢となっているほか、一部の市場関係者の間では2022年7-9月に利上げが開始されるとの見方も浮上しています。

 

また、豪州の金利先物市場では、2023年から2024年にかけて米国を上回る利上げ期待が引き続き織り込まれています[図表3]。利上げに対して慎重なハト派姿勢を崩さないRBAに対しては、今後も市場が早期の利上げを催促する相場展開が続く可能性が高そうです。

 

[図表3]主要国の金利先物カーブ(3ヵ月物)
[図表3]主要国の金利先物カーブ(3ヵ月物)

世界的株安を受けて軟調に推移する豪ドル相場

2022年初の豪ドル相場は軟調に推移し、対米ドルでは1月28日に節目の1豪ドル=0.7米ドルを下回りました(対円では1豪ドル=80円台に下落、[図表4])。豪ドル相場下落の背景としては、米国での利上げ加速観測に加え、世界的株安による市場のリスク回避姿勢の強まりが挙げられます。

 

当面のところは、米国の利上げ軌道を巡る不透明感が後退し、世界の株式市場が落ち着きを取り戻すまでは、豪ドル相場は上値が重い展開となる可能性がありそうです。

 

[図表4]豪ドル相場の推移
[図表4]豪ドル相場の推移

豪州でのオミクロン株の感染問題に終息の兆し

一方、豪州の経済動向の面では、コロナの感染終息に向けた明るい兆候もみえつつあります。オミクロン株の感染第四波は1月中旬をピークに収まりつつあります[図表6]。

 

RBAの声明文でも、「豪州経済は依然として回復力があり、新規感染者数が減少傾向に向かえば、個人消費は回復が予想される」との景気判断が示されています。

 

足元ではオミクロン株の変異種の感染拡大への懸念が残るものの、3回目のワクチン接種率の上昇が感染の抑制要因になると期待されます。豪州での3回目接種率は1月31日時点で37.7%へ順調に上昇しています[図表7]。

 

2022年前半にコロナ終息による豪州景気の一段の回復が確認され[図表5]、年後半にRBAの利上げが現実味を帯びてくれば、豪ドル相場が見直される可能性もありそうです。

 

[図表5]豪州の実質GDPの実績と市場予想
[図表5]豪州の実質GDPの実績と市場予想

 

[図表6]豪州の新型コロナウイルスの新規感染者数の推移
[図表6]豪州の新型コロナウイルスの新規感染者数の推移

 

[図表7]豪州の新型コロナウイルス・ワクチンの接種率
[図表7]豪州の新型コロナウイルス・ワクチンの接種率

 

 

和泉 祐一

フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社

 

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