(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウィルスで苦しむ中小企業・中堅企業に対し、1兆円規模の予算をもって支援する制度、「事業再構築補助金」。幅広い業種の事業者が応募していますが、昨今のアウトドアブームを受けて、アウトドア分野で申請・採択に至る人も少なくないようです。アウトドアビジネス専門の社外CFO・村瀬功氏が、「事業再構築補助金」の採択傾向や採択事例、事業計画のポイント等を解説します。

どんな事業が採択されている?アウトドア分野の事例

アウトドア分野での採択事例をいくつか紹介します。

 

採択された事業者については事業再構築補助金ポータルサイト上で事業計画の名称と概要が公表されますので、こちらから引用し要約して記載しています。

 

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●事業者A

「合宿向け宿泊→グランピング」

テニス合宿の聖地である山中湖畔で合宿向け宿泊施設を運営する事業者が、テニス人口の減少と新型コロナによる合宿需要減少を背景に、テニスコートをグランピング施設に事業転換

 

●事業者B

「ボルダリング併設カフェ→キャンプ場」

ボルダリング併設カフェ運営事業者が、キャンプ場を開設すると共に、アカデミックな子供教育プログラムを実施する

 

●事業者C

「ドッグブリーダー→グランピング」

ドックブリーダーが、「自然が育む、人と動物の絆」をテーマにした愛犬と過ごせる自然体験型のグランピング施設を開始

 

●事業者D

「スキー場運営→アウトドアレジャー」

冬季の売上がメインであったスキー場運営事業者が、国内市場の縮小や小雪、新型コロナ等の影響による冬季収入が急減を背景に、夏季の売上の増強に取り組むべく、夏季のカフェやレンタル、アクティビティ等の新分野での事業展開を進める

 

●事業者E

「建設業→キャンプ場」

コロナ禍で建設業の売上高が減少する土木建築事業者が、土木技術と技術者の活用によりキャンプ場経営を行う

 

●事業者F

「造園業→キャンプ場」

造園業で培った技術・経験を活かし、公園にて都市型デイキャンプ場の創設運営を行う

 

●事業者G

「WEB業→グランピング」

WEBによりイベントを企画する会社が、自社のイベント企画力を活かし、ソロキャンパー用キャンプ場を開設し、汎用的なマッチングサイトを開発し他キャンプ場を含めた予約API提供やコンサルティング事業を展開

 

●事業者H

「製造業→アウトドアレジャー製品製造」

コロナで既存製品製造の売上が減っている中、これまで培った職人の技術・発想を生かしたアウトドア製品の開発・製造・販売を行う

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アウトドア領域に進出する企業は、事業者Aや事業者B、事業者C、事業者Dのように、宿泊業や飲食業、及びその他サービス業を行う事業者がケースとしては多いです。接客業の経験やノウハウが、キャンプ場やグランピング、アウトドア施設運営に活かされる面は多いと思われます。

 

また、事業者Eや事業者Fのように、建設業や造園業といった業種の事業者においても、自社の技術を新規事業に活かすことができるでしょう。

 

一方で、IT分野の事業者がアウトドア領域の新規事業に参入することは、ネットの業界とリアルの業界とでビジネスの特性が大きく異なることもあり、参入が難しい面もあると考えられますが、一方で事業者Gの事例のように、ネットとリアルをうまく融合した新しい事業を展開する、という事例もあります。

 

本補助金においては、「先端的なデジタル技術の活用」が審査項目に挙げられていることもあり、事業のデジタル化を推進している面も後押しするでしょう。

 

■特にグランピング施設の採択事例が急増

国内最大級のキャンプ場予約サイト「なっぷ」に掲載されている国内キャンプ場は約4,300施設あり、一般社団法人全国グランピング協会によると、国内グランピング施設は約350施設あります。

 

一方で、上述の通り第1回から第3回での採択事例の合計が、

キャンプ場事業が163件(第1回 39件+第2回 66件+第3回 58件)、

グランピング事業が259件(第1回 56件+第2回 99件+第3回 104件)

あります。

 

特にグランピングにおいて、現在の施設数に比較して採択事業が多い印象です。

 

採択事例の多くはこれから開業するケースが多いと思われ、かつ補助金の採択を受けても中には新規開業に至らない可能性も考えられます。

 

しかしながらそれを差し引いても、昨今のグランピング施設の急増は目を見張るものがあります。

 

■「ビジネスとして成り立つ事業計画」「採択される事業計画」のポイント

今後は、ブームに乗るだけではない、本当に付加価値をもった事業を行っていくことが重要であると考えます。

 

ブームに乗って他社を模倣しただけの事業では、ブームが落ち着いたとき、事業者が増えすぎて供給過多になったとき、市場は飽和状態となり、淘汰が生じることでしょう。

 

他にない特色を出した事業運営を行うことが、一過性でなく長くビジネスを継続するポイントとなります。

 

その意味では、たとえば、上述採択事例の事業者Bにおいては、既存のボルダリング併設カフェにおいて子供教育のノウハウを蓄積していると考えられ、それをキャンプ場事業に活かすことで、子供教育プログラムという付加価値を有したキャンプ場運営を行うことができるでしょう。

 

また、同じく事業者Cにおいては、ドッグブリーダーとしてのノウハウや顧客を活かして「愛犬と過ごせる」グランピング施設とすることで他社との差別化を行うことができると考えます。

 

その他、採択事例を見るに、たとえば、

「宿泊だけにとどまらず、地元の自然体験をコンテンツとして提供する」事例や、

「農家や漁師といった地元の業者と連携することで地元の食材を提供する」事例

などが採択を勝ち取っています。

 

他者の模倣ではなく他とは違う価値を提供する事業計画を作成することが、ビジネスとしての継続性を可能とし、結果として補助金の審査においても高い評価を受けることになると考えます。

 

 

村瀬 功

株式会社SOTO CFO 代表取締役

公認会計士・認定事業再生士

 

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