「7000万円のコストダウン」提案の中身は…
今回の提案で当社が選ばれる最大の決め手となったのはVE・CD案だった。
もともとの設計では外壁がガルバリウム鋼板製のサイディング、屋根が二重鋼板の真ん中に断熱材が挟まれている二重葺断熱折板工法で、外壁のサイディングの内側に断熱材としてウレタンを吹き付けるという仕様であった。さらに倉庫の内側に天井と壁をつくるという案である。
これに対して当社は、屋根および壁はシングルの鋼板にして、内側に断熱パネル(サンドイッチパネル)で壁と天井をつくるというアイデアを提案した([図表2]参照)。
原案では天井裏のメンテナンス用に、キャットウォークと呼ばれる点検用の歩廊を張りめぐらせていたが、断熱パネルだとその上を全面的に歩行することが可能なので、キャットウォークは必要がなくなる。これだけで約5000万円のコストダウンが実現した。
さらにいえば、断熱パネルの採用によって、低温管理すべきエリアの体積(低温管理気き積せき)が3.8万㎥から、約3分の2に当たる2.5万㎥にまで縮小できた。これによって、設備工事費のみならずランニングコストも大幅に低減する。
機能面でも向上させた。原設計だと、そもそもの目的である防虫管理が徹底できないという問題があったのだ。
建物が完成してから時間が経つと、地震だけではなく、温度の変化でも躯体である鉄骨や外壁の鋼板は動く。サイディングに直接ウレタンを吹き付ける仕様だと、そうした動きによってウレタンに亀裂が入り、そこから外気や虫が侵入する可能性が高まる。
これに対して当社の案は断熱パネルで機密性が高いので、虫が入る可能性が極めて低くなる。雨風は外皮で、熱や虫は内皮で防ぐというダブルスキンの考え方である。
この断熱パネルのアイデア以外にも、さまざまなVE・CD案を駆使して、当社は実に7000万円のコストダウンを実現した。
当社以外は規模の大きなゼネコンだったため、こうしたアイデアはほかも出してくるだろうと予想していたが、近い提案をしたのはほかに1社のみだったそうだ。