他社が「近い提案」をできなかったワケ
冷蔵冷凍倉庫の建設の場合、ゼネコンは外側の躯体だけを担って、内側の断熱や冷却設備は専門のメーカーが手掛けるいわゆる分離発注も多い。そのため、他社はこうしたノウハウをもっていなかったのかもしれない。
一方、当社は食品工場や冷蔵冷凍倉庫に設計から施工まで一貫して携わってきた経験から、トータルな知識をもっていたことがアドバンテージとなった。大手だからといって、必ずしも最適解をもっているわけではないことを、あらためて認識した案件だった。
技術的な良し悪しの判断は専門知識がないと難しいので、多くの施主は発注先の規模や知名度、関係性などに判断を委ねがちだ。
しかし、本件では施主が自ら技術面をしっかりと検討したことが、ローコストで高性能な施設の実現につながった。
このように施主が自ら検討して判断することで、結果的に費用対効果の高い施設ができることは多い。
※ VE(バリューエンジニアリング)
VEとは、「Value Engineering(バリューエンジニアリング)」の略。価値工学と訳され、製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係を体系化された手法により「価値」の向上を図るというものである。
価値と機能・コストの関係は次のような数式で表される。
価値(V:Value) = 機能(F:Function) /コスト(C:Cost)
変数たるFとCをコントロールし、Vを向上させるには
①F→/C↓(コストを変えずに機能を抑える)
②F↓/C→(機能を変えずにコストを抑える)
③F↑/C↓(コストを変えずに機能を向上させる)
の3通りの手法が考えられる。
VEはCDとは異なる概念であるが後述のCDと同義に語られることも多い。実際はコストを下げることが目的であるケースが多く、①について検討されることがほとんどである。
※ CD(コストダウン)
CDとは、「Cost Down(コストダウン)」の略で、性能や価値が低下してもよいことを前提として、コストを下げる変更を行うことを指す。
森本尚孝
三和建設株式会社代表取締役社長