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「工場の設計図」を見たプロが唖然としたワケ
工場・倉庫の建設は、数十億円から場合によっては100億円以上の資本を投じる企業の一大プロジェクトである。工期は数年がかりと長期にわたることもあり、無事に完成することはもちろん、「新たな価値を生み出してくれる建物にしたい」と願うのは施主として当然の思いであろう。工事を請け負う会社は当然、この願いを実現する責任がある。
しかし実際には「予算がオーバーしてしまった」「工期が延びてしまった」「要望が設計に反映されていなかった……」など、うまくいかないケースがあとを絶たない。作業効率化や労働環境の改善、新たな取引先の獲得など、多くの価値を生み出す建物がある一方、完成すらままならない建物があるのもまた事実である。
このようなトラブルはいったいどうして生じるのか。実際にあった事例をもとに、工場・倉庫建設の特殊性を考察する。
〈事例〉馴染みの工務店に依頼した結果……
A社は1973年創業の食品メーカーである。地元で古くから愛される郷土料理を工場で生産し、お土産品として駅や空港で販売している。
主力商品の増産のための新工場建設を計画し、社長は地元の工務店や設計事務所と話を進めていた。既存の工場の建設をその2社に担当してもらった経緯があり、社長は今回も同じ会社に依頼をしようと考えていた。
一方、プロジェクトリーダーとなったのは社長の息子である専務だった。その専務は事業承継も見据えて、前例の踏襲や地縁のつながりによる「安易な判断」を見直し、新たな建設計画を立てたいと考えていた。そこで、以前働いていた住宅系の建設会社での人脈を活かして、独自に新工場の建設プランを描き出していったのである。
専務が当社を訪れたのは、「工事に入る前に食品工場の建設実績がある人からの意見を聞きたい」という理由からだった。相談に来られたときにはすでに設計図が出来上がっている状態で、それをもとに工事を進める予定になっていた。
A社が、当社に持参した設計図は一目見ただけで、食品工場建設の実績のない人が描いたと分かるものだった。