日本の国土のうちおよそ20%は「誰が所有しているかわからない」状態です(平成28年度地籍調査:国土交通省)。こうした問題を解決すべく、日本では令和6年4月1日より「相続登記が義務化」されます。違反した場合10万円以下の過料を科される可能性もあるこの法律……義務化に至った背景から実際に登記する際の注意点について、永田町司法書士事務所の代表で司法書士の加陽麻里布氏が解説します。

「相続登記義務化」の問題点と対応策

相続登記義務化にあたっては、いくつか問題点もあります。

 

まず、相続登記を申請する場合は登記費用がかかります。金額としては、相続する土地の評価額の0.4%の登録免許税を法務局に収める必要があり、登記だけでも10万円20万円といった、まとまった金額がかかってきてしまいます。また、この金額は専門家の力を借りず自力で申請した場合であり、専門家などに依頼をすると、その費用が別にかかってきます。

 

さらには相続人全員と連絡が取れない、といったケースや、遺産分割がまとまらないケースというのもあります。

 

もし、3年以内にこれらの問題をクリアできず、登記ができなければ、過料に科されてしまう可能性があるのです。

 

相続登記の義務を免れることができる…「相続人申告登記」制度

このような問題から、登記が間に合わない場合は義務を免れることができる制度も用意されており、この制度のことを「相続人申告登記」といいます。

 

どのような制度内容かというと、法務局に、相続が開始した旨と、自分が相続人である旨を申し入れることによって、登記官が職権で相続人の住所・氏名を登記していく制度になります。

 

この手続きをとることによって、相続人は、相続登記の義務を免れることができます。

 

しかし、この相続人申告登記にも注意があります。この相続人申告登記後に、遺産分割協議が成立し、不動産を誰が取得するか決まった場合、遺産分割協議の成立の日から不動産を取得した人に相続登記をする義務が発生します。

 

相続人申告登記は、あくまでも遺産分割協議が纏まるまでの臨時の救済制度、というように考えていただければと思います。

登記に悩むことになる前に…生前からきちんと対策を

登記義務化の施行後は、相続が発生した際、遺産分割協議書がまとまっていなかったとしても、まずは法定相続による法相続登記をするか、相続人申告登記を入れておき、その後、遺産分割協議をきちんと行ってから相続の登記をする、という流れが必要になります。

 

相続登記が放置されるのは、遺産分割協議がまとまらない場合や、登記しないままに再度相続が発生してしまい、収拾がつかなくなることに起因します。

 

そのため、こういった紛争をあとに残さないことが大切になってくるのかと思います。

 

たとえば今後、両親などの相続発生する可能性がある場合は、しっかり遺言書を残してもらう。共有状態の不動産がある場合は、相続が発生する前に土地の共有状態を解消するなどの措置を取っておく、など、きちんと生前対策を取っておくことによって、次の代、また次の代にこういった問題を残すことがなくなります。

 

そのほか、今回の相続登記義務化とあわせて、「住所氏名変更登記の義務化」も法令に加わりました。

 

内容としては、不動産所有者の住所又は氏名に変更があった場合、変更があったときから2年以内に変更の登記申請をしないと、5万円以下の過料が科される可能性がある、というものです。

 

そのため、自身の住所氏名に変更があったのにまだ登記していない、と思い当たる人は、いまのうちから住所氏名の変更登記を入れておいたほうがよいでしょう。

 

もう1点、法改正にあわせて、「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。

 

この制度は、「土地を相続したけれども価値としては二束三文だし、もういらない」という人に向けたもので、一定の条件を充足した場合、相続した土地の所有権を手放すことが可能になる制度です。

 

■相続登記義務化はいつから? 司法書士が動画で解説

 

 

加陽 麻里布

永田町司法書士事務所

代表司法書士

 

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