新たに送られてきた申立書…「愕然とした」ワケ
理沙さんが働いていないため、裕司さんは月額20万円の支払いを命じられたわけですが、理沙さんの「潜在的稼働能力」が容れられれば、減額を認められることがあります。
潜在的稼働能力とは、婚姻費用や養育費の算定に当たって、その人が働こうと思えばこれまでにどのくらい稼げたのか・今後稼ぐことができるのかを考慮する概念です。
本件では「賃金センサス」を用いて算出しました。「賃金センサス」とは政府の調査結果に基づく資料で、「賃金構造基本統計調査」とも呼ばれます。ここに記載されている、年齢・学歴に応じた収入の平均値から、潜在的稼働能力を計算できます。
その結果、婚姻費用の減額が認められました。
しかしその後、婚姻費用や慰謝料の申立とは別に、「離婚をし、根本的な関係解消を図りたい」旨の申立書が送られてきました。
このころになってやっと、理沙さんがどんな理由から出て行ったのかが明らかになってきます。裕司さんは、とにかくなんでも知らなければ気が済まない性格で、詮索癖が強かったそうです。幼児学級で知り合ったママ友の名前、その夫の学歴や職業、離婚歴はあるか、先生の学歴……など、事細かく聞いてくるのが不満だったのだとか。
交際前からそれまでの交際歴などをしつこく聞かれて不快に思っていたそうなのですが、結婚を焦っていたタイミングで、自分にはない学歴・職歴をもった裕司さんが現れ、言わば妥協した形で交際をスタートしたとのことでした。
ただ、家を出た最大の理由は、裕司さんの不貞行為への疑念であったようです。
申立書には、裕司さんが婚姻期間中にマッチングアプリを始めていること、そこには「×1(バツイチ)」と記載していること、10年前の写真を使用していることなど、事細かに記載されていました。
アプリ上でのセクシャルな書き込みもすべてスクリーンショットを撮られていました。
バレていたのか……と愕然とした裕司さんですが、それでも「他に彼女はいない、戻って来てくれ」と主張し続けました。相談へやってきた当初は理沙さんへの怒りが強かったのに対し、この時点ではよりを戻したい意思が強くなっていたようでした。
さて、離婚請求の結果はどうなったのでしょうか。