研修医あるある②毎日「不測の事態」連続で自信喪失
皆さんの多くは、小さい頃から「頭のいい子」「できる子」といわれてきたはずです。そのため、研修医になる際も「自分ならできる」という自信があったのではないでしょうか。幼稚園から高校までトップクラスの成績を収め、超難関の医学部に入学。そして同じく超難関の医師国家試験に合格したのですから当然ともいえます。
しかしいざ臨床の現場に立つと想定外の出来事の連続です。今までの勉強だけでは対応できないことも多く、研修医の方々に話を聞くとほぼ全員が一度は完膚なきまでに自信が崩れてしまった経験があるといいます。
例えばこういったことです。「とっさの判断ができない」「上級医に指示されたことが満足にできない」「上級医に治療法を相談したら『話の意味が分からない』と怒鳴られる」「仕事量が多過ぎて整理がつかない」「患者からクレームがあって落ち込む」――。
エリートである研修医とはいえども社会人としては新人。40代の私からすれば、初めから完璧にできないのは当たり前ですが、研修医の皆さんは小さい頃から培ったエリート意識があるので、かなり焦ってしまうそうです。
研修医あるある③理不尽すぎる上級医・指導医
以前からドクターの間では、「同じ医学部なら私立大学より国公立大学のほうがヒエラルキーは上だ」という考えが少なからずあるようです。これは平均偏差値に明確な差があったことが大きいでしょう。
しかし現在の医学部の平均偏差値は、数十年前と比べると圧倒的に高くなっており、特に私立大学は30年間で17も上がったことで国公立大学と同等になっています(図表1)。
ところが一定以上の年齢のドクターは、そのことを知らずに「俺は国立大出身だから」と私立大出身の研修医に対して見下すような態度を取ることもあるようです。実力ではなく出身大学だけで優劣を判断され、しかも今となっては偏差値が逆転しているかもしれないのに初めから見下されては、プライドが傷つくのは当然でしょう。
そして現在の多くの研修医の学力は、年配の上級医より上です。経験値という意味では敵うはずがありませんが、最新の治療法などの知識は上の場合もあるかもしれません。
例えばこのようなことを聞いたことがあります。
「『患者の状態がこうなったらこう対処しろ』と指示されたので、実際に指示に従ったところ、患者の状態が悪化した。後日のカンファレンスでどうしてそうなったのかと問われた際に、上級医が『研修医が私の指示どおりの対処をしなかったからです』と堂々と答えたので立場がなくなった」
また次のようなことをされてプライドが深く傷ついたという話も聞いたことがあります。
「指導医が講演会や学会にばかり注力して直接指導してもらっていないのに、ちょっとミスをしただけで大勢の前で罵倒された」
「休日中に上級医から電話がかかってきて、たまたま出られなかったのですぐ折り返し掛けたら『なんですぐに出ないんだ。お前は医師である前に社会人として失格だ』と怒鳴られた」
このような理不尽な上級医・指導医に限って普段は何も教えてくれないそうです。そのため、「ロールモデルとなる先生がいない」と嘆く研修医を何人も見てきました。