クリニック開業には「8000万円から1億円」必要
キャリアプランとは、「将来の夢を実現する計画を立てること」です。医師にとって「将来の夢」とはなんでしょうか。私が今まで研修医の方々から聞いた「将来の夢」には次のようなものがあります。
<①クリニック開業>
以前の医師の勝ち組といえば、大学病院で出世することでした。しかし現在は医局制度が崩壊したことで、「白い巨塔」に居続けることに価値を見いだせない若手を中心にクリニック開業を目指すドクターが増えています。
開業医になる魅力はなんといっても収入の多さでしょう。美容外科の開業医などでは年収1億円以上も珍しくありません。また一国一城の主になれるので好きなときに休めたり、人間関係に悩むことがなくなりQOL(Quality of Life)が高まることや過疎地などで地域医療に貢献できるといったことに魅力を感じて開業するケースもあります。
開業をするには次のようなプロセスが必要になります。
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1.コンセプトづくり
2.基本理念の策定
3.エリアの選定
4.融資などの資金調達
5.許認可
6.クリニック建設
7.オープン
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この過程には1年から数年かかるといわれています。費用としては診療科にもよりますが8000万円から1億円といったところでしょう。多くは金融機関からの融資で賄えますが、自己資金も10~20%(1000万~2000万円)ないと返済がかなりきつくなるはずです。
<②高齢者向け住宅の開設>
おもにクリニックに併設するといった形で高齢者向け住宅を開設するドクターも少なくありません。超高齢社会となっている日本にはなくてはならない施設なので需要、社会貢献度ともに非常に高い事業といえるでしょう。
高齢者向け住宅には、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などがあります。これらを経営する魅力は、安定的に賃料収入のほかに診療報酬、介護報酬、生活支援サービスの対価を得られることでしょう。介護報酬とはオーナーが、要介護または要支援者に介護サービスを提供した場合、その対価として事業者に支払われる報酬のことです。
老人ホームの場合は、入居者の介護必要度などに応じて住宅型、介護付、健康型などの種類があります。いずれにしても一定の基準をクリアして都道府県に届出さえすれば開設は可能です。
サービス付き高齢者向け住宅、いわゆるサ高住は、ご存じのようにバリアフリー対応の賃貸住宅で、おもに介護認定が自立あるいは要支援・要介護高齢者を受け入れています。
これらの住宅はドクターが経営すべき条件がそろっています。なぜなら国が地域包括ケアシステムを推進しているからです。
■ただし、「サ高住」開設にかかる資金は億単位
地域包括ケアシステムとは、介護が必要になった高齢者が住み慣れた自宅や地域で暮らし続けられるように「医療・介護・予防・生活支援・住まい」の5つのサービスを一括的に受けられる支援体制のことです。
現在65歳以上の人口は3000万人を超えており国民の約4人に1人となっています。厚生労働省は、2042年にはピークを迎え約3900万人となり、その後も75歳以上の人口割合は増加し続けると推計しています。
したがって約800万人の団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要が、より増えていくことが予想されます。そのため国は地域包括ケアシステムの推進を決定しました。
このまま病院に長期入院する高齢者が増えれば、必要な治療を受けられない人が増えていく一方です。高齢者がたとえ認知症や慢性疾患となっても地域で暮らせる仕組みづくりは日本にとって必要不可欠でしょう。
今後の課題は、「医療・介護・予防・生活支援・住まい」の5つのサービスを円滑に提供できる体制づくりと医師や介護士など専門職とのスムーズな連携です。この課題がクリアされれば入院した高齢者が早く退院し、住み慣れた自宅で生活できるようになるはずです。
国は30分以内に必要なサービスが提供できる環境を目指していますが、スムーズな在宅介護を行うには今のところサービス付き高齢者向け住宅が不足しています。たとえ大病を患っている高齢者でも在宅で暮らせるような住宅が求められているのです。
このような住宅では、利用者のニーズに合わせて適切なサービスを提供できること、さらに入院、退院、在宅医療といったように状況が変化しても利用者一人ひとりをよく理解したサービスが提供できることが重要です。
地域包括ケアシステムの「医療・介護・予防・生活支援・住まい」の5つのサービスとは次のようになります。
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①医療との連携強化
②介護サービスの充実
③予防の推進
④見守り、配食、買い物などの生活支援サービス
⑤高齢者にとって快適な住まいの整備
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これはすなわちサービス付き高齢者向け住宅の推進ともいえます。ただし、これらの住宅は、比較的大型の施設になるので開設には億単位の資金が必要になります。多くは融資や補助金などで調達できますが、やはりある程度の自己資金は必要でしょう。