偏差値ヒエラルキーは行政だけが作ったものではない
偏差値ヒエラルキーは、教育行政だけが作りあげたものではありません。大学や教育産業界の声も強く働いています。そして保護者のニーズ、経済界のニーズも関与しています。そして私にも責任がありますし、教師にも責任があります。そうして「自分も関与している、自分にも責任がある」という捉え方、つまり「成長モード」で捉えられる人だけが、物事を変えて行けるのです。
脱偏差値ヒエラルキーのために、教員には何ができるのか、「みんなちがって、みんないい」をいかに授業の中や授業外の活動に落とし込んでいくか、教師の腕の見せ所です。
一つのアプローチとして、学習指導要領を子どもたちと一緒に探究するという方法があります。
①知識・技能
②思考力・判断力・表現力等
③学びに向かう力・人間性等
言うまでもなく、学習指導要領に掲げられた資質能力3つの柱です。これを子どもたちと共有した教師はどのぐらいいるでしょう。まだの先生は、是非やってみてください。その取り組みの価値は計り知れません。
子どもたちにとって学びの目的を根本から考え、その方法を検討する機会になります。また、教師が提示する教科授業や活動に込められた意図を知る機会になります。そして、「みんなちがって、みんないい」を国が大事にしており、しかもそれを日本中の全ての教師に伝えているという事実を知ることができます。
教師自身にとっては、授業の目的や方法について、子どもたちと合意形成できるという大きなメリットがあります。それから、今の自分をReflectionする機会になります。そして、教育の本質や今後の教育のあり方を確認する機会になります。
たとえば「③学びに向かう力・人間性等」は、箇条書きにすると3番目なのですが、相関関係を示す正三角形の図では必ず上の頂点におかれます。
それはなぜなのか? そもそも「学びに向かう力」とは? 「人間性」とは?……こうして探究していくと、「あれ? これってまさに、私が子どもたちに伝えようとしていることじゃん」とか、「これこそ、俺が授業で目指す方向性だ」という教育観や能力観に出会うはずです。
あなたのBeingと学習指導要領に示された今後10年の方向性は、深く読めば読むほど一致してくるはずです。それは教室改革、学校改革を推進するエネルギーを生み出すはずです。このような教員一人ひとりの意識や姿勢も、巡り巡って社会全体の学力観・能力観や教育制度に影響を与えます。脱偏差値ヒエラルキーの社会の実現にも繋がっていくのです。