(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代。NPO法人「老いの工学研究所」理事長の川口雅裕氏は、書籍『年寄りは集まって住め』のなかで、「健康寿命」の知られざる真実を明かしています。

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日本人の健康寿命が70歳代前半という、まやかし

テレビや新聞などで、健康食品やサプリメントの広告がよく目につきます。そこでよく提示されているのが「健康寿命」。広告では、こんなストーリーで商品を勧めてきます。

 

『日本人の“平均寿命”は今、男性が81歳、女性が87歳。一方、“健康寿命”は男性が72歳、女性が75歳です。平均寿命と健康寿命に男性で約9年、女性で12年の差がありますね。つまりこの期間、健康を損なったまま生きなければならないのです。これは大変なことですよね。だから、なんとかこの差を短くすることが重要。そこでお勧めするのが、今日、ご紹介する~~~というこの健康食品です』

 

一般には、健康寿命を「要介護にならずに、自立生活が可能な期間」といった捉え方をしている人が多いと思いますが、このような捉え方とは無関係な数字なのです。さらに言えば、「平均寿命」をこのような広告に用いるのはまったく適切ではありません。平均寿命というのは、「ゼロ歳の子が平均的に何歳まで生きそうか」という数値であって、もう何十年も生きている人には何の関係もないからです。

 

そこで本記事では、正確な健康寿命について、複数のデータを用いて考えていきたいと思います。

介護保険のデータを用いると「男性79年、女性83年」

まずは介護保険のデータを使ったものです。要介護2~5の認定を受けている人が「不健康」、そうでない人は「健康」とみなして計算します。恐らく、この方法のほうが一般的な認識による「健康寿命」により近いはずですが、これは「平均自立期間」(日常生活動作が自立している期間の平均)と呼ばれています。

 

そして、2016年の「日常生活動作が自立している期間の平均」は男性が79.47年、女性が83.84年となっています。この方法だと、広告等で使われる健康寿命よりも、男性で7年、女性で8年くらい“健康”な期間が長くなります。もっと長くなる調査もあります。

 

厚生労働科学研究費補助金による「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究班」(2012年)は、その論文「健康寿命の算定方法の指針」中で、65歳の人が死亡するまでの間で、自立して(要介護認定2以上を受けずに)生活している期間と、自立していない(要介護認定2以上になった)期間の年次推移を示しました(図表)。

 

[図表]65歳の「日常生活動作が自立している期間の平均」の年次推移(2005年〜2010年)

健康寿命は「男性が82歳、女性が85歳」という真実

2010年の男性をみると、当時の平均余命は18.9年でしたが、自立生活期間は17.2年でした。つまり、自立していない期間は1.7年に過ぎません。女性はというと、当時の平均余命が24.0年で、自立生活期間が約20.5年。自立していない期間は3.5年となっています。

 

つまり、「自立生活が営める」という、一般的に認識されている意味における「健康寿命」は、この調査によれば2010年時点で男性82.2歳、女性が85.5歳だったのです。ここから約10年が経過していますから、現在はもう少し長くなっているでしょう。

 

こうなると、広告で謳われている「健康寿命は70歳代前半」とは、10年も違います。そして、「健康寿命は男性が82歳、女性が85歳」と言われる方が、多くの人の実感に近いはずです。もちろんこれは平均値ですから、90歳、100歳でも健康を保つ人は多くいるわけで、だからこそ「人生100年時代」と言えるわけです。

 

“65歳くらいまで生きたら、健康で暮らせる期間が平均であと20年くらいはある”ことが分かっていただけたと思います。90歳まで元気というのは、ごくごく普通に起こる話なのです。

 

「老いさき短いんだから、成り行きでいい」というのはとうに昔の話で、元気でいられる長い期間をどう生きるかを考えなければなりません。

 

ただし、このときに生じてくるのが経済的不安です。長く生きたら、貯蓄が尽きてしまうのではないか、貧乏してまで長生きしたくない。そんな不安です。それでは次に、高齢者の経済的な側面について見ていくことにしましょう。

次ページ健康寿命は「高齢者が自立を失う年齢の平均」ではない

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『年寄りは集まって住め』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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