ホテル旅館との「宿泊契約成立」のタイミング…電話・ネット・対面、申込手段で微妙な差【弁護士が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

ホテルや旅館に宿泊する際には、必ず「宿泊契約」が締結されていますが、契約書を交わすわけでもなく、意識することなく、いつの間にか成立しているというのが実際のところです。宿泊経験がある人ならだれもが締結しているこの契約について、ホテル・旅館業を専門に扱う弁護士の佐山洸二郎氏が、専門家の見地から興味深く解説します。

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宿泊時には必ず「宿泊契約」が締結されている

「宿泊契約」という言葉を聞いても、なんだか堅苦しいイメージで、いまひとつピンとこないかもしれません。「あなたは宿泊契約を締結しました」といわれたところで「どういうこと?」と、思わず首をかしげてしまうのではないでしょうか。

 

しかし、この記事を読んでいるほとんどの方は「宿泊契約を締結したことがある」はずです。

 

宿泊契約とは、宿泊客とホテル・旅館側が合意をして宿泊をすることを指します。つまり、宿泊客がホテル旅館に宿泊する際、法的に見るなら、必ず「宿泊契約」が締結されていることになります。

 

しかし、「契約」という言葉がついているものの、ホテルのフロントなどで宿泊契約書を交わし、お互いに署名・捺印して…といった手続きを経ることは、普通はありません。日本の法律では原則、契約は書類がなくても口約束だけで成立すると定められており、厳密な契約書を作る必要はないのです。

 

このように、契約は特別な書類がなくても締結できるので、ホテルや旅館に宿泊する際は、予約をしたり、申し込みをしたりといった、いずれかのタイミングで必ず「宿泊契約」が成立していることになります。

 

つまり、ホテル旅館宿泊施設に泊まる際は、宿泊契約を締結した意識がなくても、宿泊契約を締結している、ということになるのです。

宿泊契約成立のタイミングは「予約方法」によって違う

宿泊契約が成立するタイミングはさまざまです。

 

日本には「民法」という、商法や会社法、旅館業法や温泉法など世の中の多くの法律の大元となる法律があります。民法はほとんどの法律の頂点にあるといっていい法律で、巨大であり、すべてのルールの大原則が示されています。

 

そして「契約の成立のタイミング」も、民法にしっかりと定められています。それは「お互いが合意したタイミング」「口約束が成立したタイミング」です。

 

もう少し厳密にいうなら、「契約の申込みがあり、それに対する承諾があったとき」です。申し込みに対する承諾があったタイミングで、お互いの合意が形成されたと認められ、契約が成立する、ということですね。

 

これには「口約束でも同様である」という大原則が、しっかり定められています。コンビニでなにかしらの商品を購入する際、「商品を渡してレジが始まった瞬間に売買契約が成立する」といえば、イメージがつかみやすいかもしれません。

 

つまり、これを宿泊契約に当てはめてみると「宿泊者がホテル旅館に宿泊の申し込みをし、ホテル・旅館側がそれを承諾した」ときに、まさに宿泊契約が成立したと分析することができます。

 

ケースごとに、より具体的に見ていきましょう。

 

電話予約:「予約できる」と返答があった瞬間に成立

電話予約の場合、宿泊希望者が旅館に電話し、「〇月×日から、何泊何日で予約できますか?」と聞けば、旅館側で空き室があるか調べ、空き室があった場合は「予約をお受けできます」と返答します。その「お受けできます」と返答したまさにその瞬間に宿泊契約が成立している、というように考えられます。

 

これが、電話口で口約束が成立し、宿泊契約が成立している例です。

 

ネット予約:予約完了画面が表示されたタイミングに成立

現代の主流であるインターネットの場合はどうでしょうか?

 

そのホテル・旅館の公式サイトで予約することもできますし、予約ポータルサイトや予約専門サイトも数多くあります。そのような様々なサイトからインターネット上で宿泊予約をする場合、宿泊契約が成立するタイミングというのはいつなのでしょうか。

 

これにはいくつかパターンがあるのですが、代表的なものを2例あげてみましょう。

 

①ネット上で必要事項などを入力したのち、「予約が完了しました」という画面が出たら、それがホテル・旅館側からの承諾のサインです。そこで宿泊契約が成立したということになります。

 

②①の予約完了画面ではなく、その後の「予約完了メールをお送りします」「まだ予約は完了していません」といった画面が表示されることがあります。その場合、予約完了メールが届いたとき、あるいは予約完了メールに最終予約確定のためのURLが記載されており、そこをクリックして「完了しました」という画面が出てきたタイミングで、宿泊契約が成立したことになります。

 

飛び込み:宿泊を承諾された瞬間に成立

当日、フロントに直接行って「今日泊まれますか?」と聞く場合は、ホテル・旅館側が「はい、空き室があります」と承諾すれば、そこで宿泊契約が成立します。

 

宿泊先を当日飛び入りで決めることはあまりないかもしれませんが、コロナ禍で流行っている「デイユースプラン」「リモートワークプラン」等を利用する場合は、飛び入りで当日の宿泊契約成立、ということも想定されるのではないかと思います。

 

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弁護士法人横浜パートナー法律事務所 弁護士

2012年、中央大学卒業。同大学院法務研究科卒業と司法試験合格を経て弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。

企業法務を中心に取り扱う中、特にホテル・旅館業界の法務に注力。
ウェブサイト「弁護士によるホテル・旅館業支援サイト(https://www.sayama-lawoffice.com/)」を運営しつつ、 月刊ニュースレターを発行。

ホテル・旅館業界にまだまだ行き届いていない「弁護士によるリーガルサービス」を届けるため、宿泊業経営者様を日々支援中。

著者紹介

連載ホテル・旅館業に強い弁護士が解説!ホテル・旅館オーナーが知っておきたい法律の基礎知識

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