(※画像はイメージです/PIXTA)

コロナ禍により、ホテル・旅館業界は大変なダメージを受けています。「あの老舗旅館が倒産!」などと報道されるたび、寂しく残念な気持ちになってしまう人も多いと思いますが、じつは、一般の人が抱くような「組織を畳んで解散する」ことばかりが倒産ではないのです。ホテル・旅館業を専門に扱う弁護士の佐山洸二郎氏が平易に解説します。

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収束しないコロナ禍、ホテル・旅館の倒産が止まらない

2020年からの新型コロナウィルスの流行により、ホテル・旅館の倒産ラッシュが続いています。

 

緊急事態宣言下の休業要請や、外出自粛による宿泊者の減少で、ホテル・旅館・宿泊業界は苦境にあえいでおり、コロナウィルスの影響による2021年の宿泊業界の倒産件数は、過去10年で最多でした。ニュース番組等でもたびたび老舗旅館の倒産が伝えられています。

 

ここで使われている「倒産」という言葉ですが、多くの方は「破産して、もう会社の経営が立ち行かなくなったから会社を畳む」というイメージをもたれるのではないでしょうか。

 

しかし法的には、「倒産」という言葉には「会社を畳む」「破産する」という意味だけではなく、会社を畳まずに、その会社の再建・リスタートをはかる「民事再生」という手続きの意味も含まれています。

 

ニュースや統計で使われる「倒産」という言葉は、会社を畳んだケースだけではなく、「民事再生」の意味で使われていることも多くあります。

 

そのため、「ホテル・旅館の倒産ラッシュ」というニュースがあった場合、「民事再生」という手続きを取って、会社を畳むことなく、再建・再起を目指し経営を進めている、大変ではあるけれども、未来に希望が持てるケースもあるのです。

「破産・民事再生」は「倒産」という括りに含まれる

ここで「倒産」という言葉について法的に整理してみましょう。

 

上述した「破産・民事再生」は、それぞれ「倒産」の1カテゴリです。「倒産」という大カテゴリのなかに「破産」と「民事再生」という小さなカテゴリが含まれている、とイメージしていただければいいでしょう。厳密には、倒産にはほかにも複数の種類がありますが、大きくな括りとなるのは「破産」と「民事再生」の2つです。

 

●破産

「破産」は、残っている財産を整理・分配する、まさに会社を畳むための手続きです。会社の経営が立ち行かなくなり、すべての支払いを完了できない場合、現段階で残っている財産を整理し、支払わなければいけないお金の支払いを可能な限り行い、最終的に社員を解散させて会社を畳みます。この一連の流れは、「倒産」という言葉のイメージと一致するのではないかと思います。

 

●民事再生

一般の人が思い浮かべる「倒産」という言葉のイメージと異なり、会社を畳まずに経営を続けていく、という手続きです。民事再生をするのは、経営の雲行きこそ怪しいものの、「会社を畳む」より、「会社を畳まずにしっかりと経営の計画を立ててリスタートする」ほうが適していると判断できる場合です。

 

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