(※画像はイメージです/PIXTA)

ただでさえややこしい相続手続き。国をまたいだ相続が発生すると、「どちらの国の法律に準拠すれば?」といった疑問が湧き出ます。本記事では、日本と韓国の相続手続きについて見ていきましょう。日本経営ウィル税理士法人の顧問税理士・親泊伸明氏が解説していきます。

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日本民法と韓国民法…「法定相続分」が結構異なる

■はじめに

 

前々回、前回の記事では、法定相続人、代襲相続人について説明しました。今回は、これらの法定相続人、代襲相続人に認められる民法上の相続分(法定相続分)について、日本民法と韓国民法の違いを解説します。

 

■法定相続分とは

 

法定相続分とは、共同相続人が取得する相続財産に対し、民法で定められた相続割合をいいます。日本民法では第900条に、韓国民法では第1009条に規定されています。
 

▶日本(民法900条)

同順位の相続人が数人あるときは、その法定分は、次の各号の定めるところによる。

一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。

 ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

 

▶韓国(民法1009条)

①同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は均分とする。

③被相続人の相続分は、直系卑属と共同で相続するときは直系卑属の相続分の5割を加算して、直系尊属と共同で相続するときは、直系尊属の相続分の5割を加算する。

 

韓国民法の第1項は、たとえば直系卑属が2人いる場合、それぞれ2分の1ずつの相続分を有することになる、ということです。そして第2項は、たとえば直系卑属1人と配偶者が相続人となる場合、直系卑属が5分の2、配偶者の相続分が5分の3(直系卑属の相続分5分の2の5割増し)の相続分を有することになる、ということです。

 

日本民法と韓国民法の法定相続分をまとめると、[図表]のとおりです。

 

[図表]

 

まず、第1順位の「配偶者と子(直系卑属)」の相続については、日本民法の場合、配偶者の相続分が2分の1で固定ですが、韓国民法では子の人数で変動し、配偶者の相続分は子(直系卑属)の5割増しとされています。

 

次に、第2順位の「配偶者と直系尊属」の相続については、日本民法では配偶者の相続分が3分の2で固定ですが、韓国民法では直系尊属(親)の人数で変動し、配偶者の相続分は親(直系尊属)の5割増しとされています。

 

なお、直系卑属も直系尊属もいない場合は、韓国では第三順位に進むことなく配偶者の単独相続になります。

 

第3順位の相続については、日本民法では「配偶者と兄弟姉妹」の相続となり、配偶者の相続分は4分の3ですが、韓国民法では被相続人の配偶者のいない兄弟姉妹だけの相続となりますので、兄弟姉妹の人数で均等に按分することになります。

 

第4順位の相続は「四親等以内の傍系血族」ですが、親等の近いものが相続人となり、同じ親等の者が複数人いれば、人数で均等に按分することになります。

次ページ韓国の相続では、配偶者の相続分が「変動」する

本稿は筆者が令和4年1月現在の情報に基づき、一般的な内容を簡潔に述べたものである為、その内容の正確性、完全性、最新性、信頼性、有用性、目的適合性を保証するものではございません。実際の判断等は個別事情により取り扱いが異なる場合がありますので、税理士、弁護士などの専門家にご相談の上ご判断下さい。

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