韓国で「戸籍のある人」「ない人」…何が違うのか?
■はじめに
第1回では、在日韓国人の相続人確定のために、被相続人の出生から死亡時までの戸籍(除籍謄本)と家族関係登録簿を揃える必要があるものの、韓国の役所や大使館・総領事館への届出の漏れにより、戸籍などが事実と一致していない場合があることを説明しました。
しかし、きちんと届出をしていても戸籍が誤っているケースが存在します。今回は、韓国の戸籍制度やその変遷について解説します。
■韓国の戸籍制度
韓国の戸籍制度は、中国伝来のもので非常に古くからありましたが、いくつかの変遷を経て、伝統的な戸籍が人口把握の観点や身分秩序の維持と租税徴収などのために近代的な方式に変更されてきました。1909年に民籍法が法として施行されたあと、1910年に日本の韓国併合により、日本の統監府が民籍法に基づき親族関係の調査を本格的に実施しました。
1922年には「朝鮮戸籍令」が公布され、戸籍簿が作成されました。この「朝鮮戸籍令」の制定により、身分関係を公示する制度が定着したとされています。当初の戸籍は、縦書き手書きのもので、その形式は日本の戸籍と同様のものです。その後、1970年ごろから横書きハングルの新様式が採用され始めました。
さらに、1990年代後半より戸籍簿の電算移記作業が進められました。そして002年には、オンライン化が完了し、全国どこの役所からでも戸籍が取得できるようになりました。日本でも大使館や領事館で取得可能です。
■戸籍制度の廃止
戸籍制度は日本の昔の戸籍制度とほぼ同じであり、戸主制度を採用していました。すなわち、戸主を中心に家単位で戸籍を編製した制度であり、戸主は基本男性でした。そして妻は夫へ、子女は父の戸籍に入籍されることが強制されたため、戸籍謄本一つで家族のすべての変動状況を知ることができました。
しかし男性中心主義や個人情報の侵害の観点から、戸籍制度は2007年12月31日をもって廃止されることになりました。そのため、2007年12月31日までに生まれた人については戸籍がありますが、それ以降に生まれた方には戸籍がありません。このように韓国では生まれた日によって戸籍のある人とない人がいます。