市場の「極端な偏り」が解消すれば大きな超過収益機会
2021年の日本株市場の物色動向で顕著だったのが、バリュー株の反転上昇とグロース株の相対的な弱さで、特に前半で大きな動きがみられました。また業種別にみると、上位を資源関連、自動車関連、金融などバリュー株の多く含まれる景気敏感セクターが独占しました。
これは景気回復を織り込む動きとともに、2020年まで極端にグロース株優位で、グロース株とバリュー株のバリュエーション格差が2000年のIT相場ピーク時を超える水準まで高まったところでの正常化のあらわれであったと解釈しています。
足元でもバリュエーション格差は歴史的高水準にあり、二極化と関連の深い過度な金融緩和政策の修正見通しを踏まえると、短期的な揺り戻しはあってもバリュー株優位の展開となる可能性が高いと考えます。一方で、2021年もパフォーマンス格差が継続したのが企業規模別パフォーマンスで、大型株優位の流れが年後半に加速しました。
2022年は経済正常化による、内需の回復を受けた利益成長や、極端に悪かった需給バランスの改善などから小型株が見直される局面があると想定しています。
東証市場再編をきっかけに加速する動き
ここ数年、日本株市場の注目を集めてきた東証の市場区分再編ですが、2022年4月に新市場がスタートします。東証一部からプライム市場に移行する基準の緩さや最終的にプライム市場の上場企業数が相応に多くなることで批判的な論調もありますが、気候変動に関する情報開示やコーポレートガバナンス体制などの基準は厳しくなっており、日本株市場全体のガバナンス水準が底上げされると期待できます。
2021年から一部の企業では女性取締役の選任によるダイバーシティの推進や持ち合い株の解消、上場子会社の整理などが進むなど、着実にガバナンス改善は進展しています。さらには、資本効率を意識した自社株買いの実施なども裾野が広がっており、株価見直しのドライバーになったケースもみられます。
ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点では、気候変動や環境対応がビジネスに与える影響、ポストコロナにみる従業員マネジメントの巧拙やダイバーシティの推進などが企業価値を考える上でより一層重要になっていきます。
これらは、リスクとなるケースもあれば、アップサイド、成長機会となるケースもあります。ただ、同時にそうした企業のクオリティ面が過度に株価に織り込まれているケースも見受けられますので、注意が必要です。
だからこそ、ボトムアップのアクティブ運用が有効となると考えており、独自のリサーチやエンゲージメントを通じて、株価に織り込まれていない変化を捉えることが超過収益、高いリターンにつながります。
2022年は良好なファンダメンタルズと割安感のある株価バリュエーションを踏まえると、日本株市場の見通しとしては底堅い展開を想定しています。
日本株市場自体が、米国株をはじめとするグローバル株式市場に出遅れていますが、経済再開のタイミングの違いなどから相対的に日本株にとって優位な状況が期待できます。より長期的な見地からは、東証市場再編などをきっかけに、日本株市場全体に改善が進むことで欧米企業にキャッチアップして、日本企業の投資魅力が高まることが重要です。
前田 建
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
執行役員/プロダクト統括
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