良好な企業業績見通し
2021年度の企業業績は3割程度の増益が見込まれており、上期決算でも好調が確認されました。1月下旬から10−12月期の四半期決算が発表されますが、回復基調にあるマクロ環境を受けて良好な内容となるかに注目が集まります。
外需関連、特にテクノロジー関連は増収増益となっている企業が多く、投資家からも高く評価されています。一方で、経済再開の出遅れから内需関連は新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んだ利益水準に戻るのに時間がかかっています。内需も含めて全体的に通期予想が上方修正されるようになれば、業績面で株価上昇を支えることが期待できます。
少し気掛かりなのは円安、資源価格高騰、供給不足などに起因するコスト増の影響です。これまでのところ価格転嫁に対して消極的だったり、様子見姿勢を続けている企業が散見されます。特に日本企業は長期間デフレ圧力に晒されてきたために、インフレ環境下での適切な経営戦略が身についておらず、戸惑っているのではないかと推察します。
ブランド力を背景とした適切な価格転嫁、競争力を毀損しない形での合理化やコスト削減、長期的視点に立った業界再編などによって乗り切れる業界や企業を選好します。
日本は米国株式市場対比で割安感
2020年には世界的なリスクオンの相場環境の中で日本株式市場も大きく上昇して、利益ベースのバリュエーション指標である市場PER(TOPIX、株価収益率、12か月予想)は18倍まで拡大しました。2021年もTOPIX(配当込み)で10%超のリターンとなりましたが、企業業績が伸長したことを受けて、足元では市場PERは14倍を下回る水準にあります。中長期的に見て過去平均を若干下回る水準であり、割安感があるともいえます。
一方で、2021年の株価リターンの点で日本株市場はグローバル株式市場、特に米国市場に対して大きく出遅れました。その結果、市場PERが20倍以上と歴史的にも高位にある米国市場と比較して、相対的な割安感は強まっています。
成長力、利益率が高く、株主重視の姿勢が明確な米国企業は魅力的ですが、バリュエーションも加味した投資魅力という観点では必ずしも優位とは限りません。
日本経済の成長率や企業の利益率の低さはよく指摘されるところですが、大いに改善の余地がある一方、期待値があまり織り込まれていないところに投資妙味があります。