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人間は自分の将来を「悲観的に考えない」
人は多くの場合、自分の将来について、悲観的に考えない傾向にある。
日本に少子化時代が来ると予測されたのは、30年以上も前のことである。大学に入る若者が減るのだから、大学は改革して変わらなければならないと言われ続けてきた。
そしていま、予測どおりに日本国中に定員割れの大学はたくさんあり、倒産する学校も出てきた。少子化に向けて改革を続けてきた大学もあるが、ほとんどの大学は十年一日の如ごとしであった。
この例などは「楽観主義バイアス」と呼ばれる典型である。
大手電機メーカーも、白物(しろもの)家電は韓国や台湾が追いつけ追い越せで迫ってきているので、変わらなければならないと随分言われてきた。銀行や自動車メーカーも事情は同じ。変わらなければいけないという意識はあったが、切迫感をもって変えようとした会社は少なかったように思う。
大学の先生たちに経営感覚が乏しいのと同様に、大企業の社員たちにもどこかに安心感があった。楽観主義バイアスである。この心性はなかなか変えることができないが、人にはこういう特性があるということを知っていれば、心の持ちようが少しは変わってくる。
実際、現在の危機的状況を見据えて改革を主張していた人は、むしろ疎んじられていたように思う。というのも、将来、どんな要因が加わってくるか誰にも予想がつかないからだ。慌てて動いて、すべて無駄に終わったということもありうる。
将来のことは不確定要素が多いので、単純に楽観主義バイアスだけで片付けられない部分もある。だが、大規模災害の起こる可能性についてはどうだろうか。
関東大震災から約100年が経った。首都圏から東海地方にかけては、いつ「南海トラフ地震」が襲ってもおかしくないと言われている。東日本大震災以上の被害が出ることを、地震の専門家は異口同音に指摘している。犠牲者の数もシミュレーションされており、ニュースでも報じられている。
だが、国や自治体はその備えをしているだろうか。また、私たち住人も「関東大震災クラスの地震」が来るという覚悟を持って備えをしている人はごくわずかだろう。これなども楽観主義バイアスである。だが、「南海トラフ地震」に関しては、「将来のことは誰にもわからない」では済まされないはずである。
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