「Wordのファイルが壊れ、提出できません…」との言い訳が〈嘘である可能性〉はどれくらいか ※写真はイメージです/PIXTA

勉強、ビジネス、公私にわたる人間関係…。あらゆる局面で、人は「相手の嘘を見破る」ことに執念を燃やしてきました。しかし、それにもかかわらず、方法はいまだに確立されていません。これだけ科学技術をはじめ、あらゆる学問が研究されている現在においてもです。なぜでしょうか。ベストセラー作家で、劇作家・演出家としても活動する竹内一郎氏が解説します。

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だいたい嘘である

「他人の噓を見破る方法」という類いの本はこれまでたくさん出版されてきた。著者の肩書は心理学者であることが多い。海外ドラマでも心理学者が非言語情報を使って、犯人の噓を見破る筋立てのものがある。

 

「噓をついているときは目をそらす」「噓をついているときは笑顔が多くなる」「噓をついているときは自分の身体に触れたくなる」。これらのことは心理学者でなくても、多くの人がなんとなく雑学本などを通して知っていることで、噓をつくときには、むしろやらないのではなかろうか。

 

もちろん真面目な心理学者も、噓がなんとか見破れないかと、随分研究を重ねてきた。「言い間違いが増える」や「声のピッチが速くなる」には若干その傾向が表れるが、統計処理を施して有意差が現れるほどの違いはない。結論的には、噓を見破る科学的エビデンスはないといってよい。

 

私たちが他人の噓を見破るのは、複数の情報が矛盾したときである。例えば学生が、卒業論文のできた部分までを先生に見せるときがある。ある学生の卒業論文を読んでみると、「1章」の途中で終わっている。私が「君は先週、2章の最後まではできています、と言ったよね」と聞く。私からそういう突っ込みが入ると思っていなかった学生が、慌てて答える。「2章のファイルを今日開いてみると、なぜかWordのファイルが壊れてしまって開かないのです」

 

こういうときに「言いよどみ」があると、私たちは「噓だな」と見破る。言いよどみだけでは見破れないが、「その日に限ってWordのファイルが壊れる可能性」と付き合わせてみると、それが噓である可能性が高いことがわかる。もちろん、間髪を入れずに言い訳が出てきたときも怪しい。言い訳を“鉄壁に”準備してきたのだな、と感じるからだ。

 

余談だが、私は20歳のときから45年間原稿を書いて生きてきた。これまで何百回となく、締切の日に原稿が書けていない言い訳を編集者にしてきた。本当にファイルが壊れて開けなくなったときもあるが、それは稀(まれ)で、ほとんどは書けていないのである。

 

学生が、「ファイルが壊れた」と言い訳をするとき、私は心のなかで「私の文章しか入っていないファイルが壊れたのは、40年以上も前、5インチのフロッピーデスクを使っていたときのことだ」と独りごちながら、許してしまう傾向がある(最終提出日は、大学が公式に決めているので、私の責任ではなくなる)。

 

心理学的に噓が見破りにくい理由は、人類が噓をつくための“研究・開発”に膨大なエネルギーを割いてきたからだ、と私は考えている。人類が有史以来、切実な思いで“研究・開発”を行ってきた成果だから、歴史の浅い心理学という学問ではまだ太刀打できないのであろう。

 

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宝塚大学教授
演劇集団ワンダーランド代表

1956年、福岡県生まれ。横浜国立大学卒。劇作家・演出家として演劇集団ワンダーランド代表を務める一方、さいふうめい名義で漫画『哲也 雀聖と呼ばれた男』の原案も担当。『人は見た目が9割』など、著書多数。

著者紹介

連載人間関係が「客観的に見えてくる」心理法則

本記事は『見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか』(河出書房新社)より抜粋・再編集したものです。

見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか

見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか

竹内 一郎

河出書房新社

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