(※画像はイメージです/PIXTA)

ただでさえややこしい相続手続き。国をまたいだ相続が発生すると、「どちらの国の法律に準拠すれば?」といった疑問が湧き出ます。本記事では、日本と韓国の相続手続きについて見ていきましょう。日本経営ウィル税理士法人の顧問税理士・親泊伸明氏が解説していきます。

「代襲相続人すら亡くなっていたら」起こること

■代襲原因の違い

 

日本と韓国の民法では、代襲相続の発生原因も異なります。日本と韓国の民法の代襲原因の違いをまとめると[図表]のとおりとなります。

 

[図表]代襲原因の違い

 

日本民法の①については、兄弟姉妹が被代襲者となる場合に準用されます。このことは、次の「再代襲の違い」で説明します。

 

日本では廃除によって相続権を失った場合でも代襲相続となります。しかし、韓国には廃除によって相続権を失った場合の代襲相続については規定が設けられていません。それは、韓国の民法には「廃除」という制度が定められていないためです。

 

これが、日本と韓国の代襲相続の違いの2つ目です。

 

■再代襲の違い

 

日本と韓国の代襲相続の違いの3つ目。それは再代襲の違いです。

 

再代襲とは、代襲相続人となる者について、さらに代襲が発生することをいいます。被相続人の子が亡くなっている場合、孫が代襲相続人となりますが、この孫が亡くなっている場合、再代襲でひ孫が代襲相続人となります。

 

再代襲については、日本の民法887条第3項では次のように規定されています。

 

▶日本(民法887条第3項)

前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

→ 被相続人の子以降の直系卑属については、再代襲が行われる。

 

しかし、被相続人の兄弟姉妹については、再代襲は行われず、代襲相続は1度のみとなり、甥・姪までとなります。

 

このことは、民法889条第2項に規定されています。

 

▶日本(民法889条第2項)

第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

→ 第2項の規定のみ準用される=再代襲について定めた規定は適用されない。

 

後半の「前項第2号」というのは被相続人の兄弟姉妹が相続人の第3順位に存在することを指しています。つまり、代襲相続の規定は、兄弟姉妹が相続人となる場合について準用する、ということです。

 

第2項の規定を準用する、ということであるため、再代襲について定めた第3項の規定は兄弟姉妹が相続人である場合には適用されないこととなります。

 

しかし、韓国の民法では上記の民法1001条のとおり、相続人となるべき直系卑属又は兄弟姉妹が相続開始前に死亡し、または欠格者となった場合に、その直系卑属があるときは、その直系卑属がその死亡などした者の順位に代わり、相続人となります

 

日本では兄弟姉妹には1度しか認められない代襲が、韓国では直系卑属がいる場合には再代襲が認められているのです。

 

これが、日本と韓国の代襲相続の違いの3つ目です。

次ページ「在日韓国人の代襲相続」事例で見てみると…

本稿は筆者が令和4年1月現在の情報に基づき、一般的な内容を簡潔に述べたものである為、その内容の正確性、完全性、最新性、信頼性、有用性、目的適合性を保証するものではございません。実際の判断等は個別事情により取り扱いが異なる場合がありますので、税理士、弁護士などの専門家にご相談の上ご判断下さい。

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