③成年後見制度
高齢者の財産を守るための制度の3つ目は、成年後見制度があります。成年後見制度は、高齢者の判断能力の衰えの程度に従い、成年後見、保佐、補助と3種類の制度があります。
財産管理契約や任意後見契約のように、契約という事前の準備は不要です。しかし、裁判所に決定を出してもらい、裁判所が関与するというデメリットはあります。
逆に、裁判所が選任した成年後見人なので、銀行など対外的には高齢者の財産を管理する権限があることが認められやすいというメリットがあります。
また、財産管理について裁判所の監督下にあることもメリットとなります。
ケースによっては弁護士や司法書士などの身内の方以外が後見人等になってしまい、第三者が家庭の財産の問題に入って来るということもデメリットと感じる方もいるかもしれません。
④信託契約
高齢者の財産を守る方法の4つ目として、信託契約があります。信託契約も契約なので、高齢者の方に判断能力があるときにしか結ぶことができません。
不動産については、登記名義を移すこととなるので、権限は明確となるメリットがあります。しかし、裁判所が関与していないので、対銀行等には、その権限が認められにくい場合もあることがデメリットとはなります。
メリットとしては、財産管理契約とは異なって、一度信託すれば、その後に高齢者の方が判断能力を失ったとしても信託契約は継続しますし、高齢者の方が亡くなった後についても定めることができます。
また、任意後見契約や成年後見制度のように、裁判所に関与をしてもらわなくても行うことができることもメリットとなります。高齢者の方が選んだ人に財産を管理してもらえるということもあります。
ポイントとなるのは「本人の判断能力」の有無
では、本件では、どの方法をとるのがいいでしょうか。
陽子さんの状態によるのですが、陽子さんに判断能力がない状態だと、契約は結べませんから、選択肢①②④は誤りで、選択肢③が正解となります。
しかし、逆に陽子さんに判断能力がある状況だとすると選択肢③が誤りで、選択肢①②④のどれがいいかということとなります。
選択肢②の任意後見契約は、陽子さんの判断能力が衰えたときに発動するものなので、現在の財産管理には使えないということになります。
陽子さんに判断能力があり、今すぐに財産管理をしてもらいたいという場合には、選択肢①の財産管理契約か、選択肢②の信託契約が考えられます。
将来的に、陽子さんが判断能力を失ったときに後見制度を利用するというのであれば財産管理契約でもいいのですが、裁判所を使わずに財産管理を身内で行いたいということであれば、信託契約を結ぶのがいいのではないかと思います。
本件の正解は、状況や考え方により異なりますが、陽子さんはまだ判断能力があるということを前提として、選択肢④にしたいと思います。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士
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