「不動産管理会社」を活用した相続税対策
不動産オーナーの所得を不動産管理会社に移転させるための方法としては、大きく分けて
■不動産オーナーの所得を不動産管理会社に移転させる方法
- 管理料徴収方式(不動産管理会社は個人所有物件の管理を行う)
- 転貸方式(個人オーナーが所有物件を不動産管理会社に一括で貸し付け、会社は個人オーナーに借上げ家賃を支払い、一方で借り上げた物件について入居者を募集し、家賃収入を得る)
- 不動産所有方式(不動産管理会社が物件を取得、管理運営を行う)
の3つの類型に分類されます。このうち、不動産所有方式の会社では、会社が賃貸建物だけを取得し、その敷地は賃貸借で「土地の無償返還に関する届出書」を提出することが基本です。この場合、賃料収入は100%法人に入ります。
個人の家賃収入がすべて会社に置き換えられ、個人としては地代収入が残るだけなので、収入の分散効果は不動産所有方式が最も大きいと言えます。
不動産管理会社を設立した場合には、所得の分散による所得税・住民税の節税、相続財産の増加の防止、相続税納税資金の準備などのメリットがある一方、会社設立に伴い各種のコストが発生するなどのデメリットがあります。
このコストを上回る効果が無ければ、不動産管理会社設立の意味がなくなってしまいます。
その他の相続税対策
複数年にわたって連続して贈与する方法や不動産管理会社の活用以外に、以下のような対策も考えられます。
■生命保険の活用
年齢が若ければ、同じ保険料でもより大きな保険金額を確保することができます。
■高収益な不動産を孫に贈与する
中長期にわたり収益を孫に帰属させることで、贈与者の相続税を軽減する効果が期待でき、なおかつ相続税を1世代飛ばすことに繋がります。
【具体例】
以下の条件で、長男の子(孫)に祖父(被相続人)からA不動産を生前贈与した場合と、贈与しなかった場合の税額の試算と節税の効果について。
1.被相続人 祖父
2.相続人 長男・長女
3.相続財産 A不動産3,000万円相当、その他の財産20,000万円相当
4.遺産分割 長男と長女は祖父の遺産を2分の1ずつ相続
中期・長期で考える相続対策のまとめ
- 贈与税の課税制度には「相続時精算課税」と「暦年課税」の2つがある
- 暦年課税制度は近い将来廃止される可能性がある
- 不動産管理会社を活用した相続税対策では、不動産所有方式が最も収入の分散効果が大きい
大槻 卓也
行政書士法人ストレート 代表行政書士
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