前回は、経営者は事業承継のメドを何歳までに立てておくべきかを解説しました。今回は、後継者の側に立った場合の「ベストな事業承継のタイミング」について見ていきます。

後継者が40代のうちに承継を終えるのが望ましい!?

後継者については早急に絞り込みをし、事業承継の意思を伝えた上で合意を得る必要があります。

 

本連載では特に親子承継のケースについてご説明していきますから、対象となる後継者は当然、経営者のお子さんです。ただしその場合にも複数の子どものうち、どの人間に継がせるかということもできる限り早く決定し、事業承継計画を立ててみるのがよいと思われます。

 

そして、後継者候補が決まったのであれば、従業員からの信頼を得られるように育てていかなければなりません。いくら先代の命を受けた後継者であっても、実際に今後その下で働く従業員たちからの信頼を得られなければ、当然会社はうまく回っていきませんし、社員が流出してしまうことも十分にあり得るのです。

 

あるいは、後継者が従業員の信頼を得られていないと経営者が感じ、改善の目処が立たないようであれば、別の後継者を選定することが、会社にとってだけでなく後継者本人にとってもよき選択となることもあります。

 

自らの意思や願望よりも、後継者の側に立って事業承継の時期を考えたならば、後継者の年齢が40代のうちに事業承継を完了してあげたほうが、後継者の意にかなった事業承継が実現する可能性が高まります。

 

近年の後継者が事業承継した平均年齢は50.9歳ですが、事業承継のタイミングについて「ちょうどよい時期だった」と答えた平均年齢は43.7歳となっています。ここから分かるのは、全体的に実際に事業承継した年齢平均よりも、後継者が望む事業承継の年齢平均はもっと早いということです。

 

「2013年版中小企業白書」によれば、なんと後継者の年齢が40歳未満である場合の6割近くが、事業承継後の5年間程度で業績がよくなったと答えています。40代、50代と後継者の年齢が上がるに連れて、この数字は下がっていきます。

 

後継者がある程度の社会経験を積んでいるならば、思い切って事業承継に踏みきり、若いエネルギーとバイタリティに会社を託してみるのもひとつの選択肢であるといえる好例でしょう。

 

【図表1 事業承継時の現経営者年齢別の事業承継後の業績推移】

 

【図表2 事業承継時の現経営者年齢別の事業承継のタイミング】

事業承継後の業績向上には「若い力」が不可欠

さらに「2014年版中小企業白書」を見れば、「事業承継後、『新たな販路開拓・取引先拡大』を行った者が中規模企業、小規模事業者共に3割超存在し、その他にも、『新商品開発』や『赤字部門からの撤退等、業態見直し』、『異業種への参入』等の取組を行っている者も一定程度いることが分かる」とあります。

 

続けて、同調査の「事業承継後の取組と事業承継後の業績変化」の調査ですが、「事業承継後に何らかの新しい取り組みを行った企業は、先代と異なる取り組みを行っていない企業と比べ、業績が『よくなった』と回答した企業の割合が総じて高く、全ての取り組みについて、3割程度の企業において業績が『よくなった』と回答しており、『ややよくなった』まで含めると、約6割に達する」と分析されています。

 

事業承継後の業績向上に必要な要素として大きいのは、やはり新たな取り組みをすることだと言えます。それには、「若い力」が原動力として不可欠という見方も当然できるのではないでしょうか。

 

【図表3 事業承継後の取り組み】

 

【図表4 事業承継後の取り組みと事業承継後の業績変化】

本連載は、2016年6月24日刊行の書籍『たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

浅野 佳史

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本の多くの中小企業が承継のタイミングを迎えています。承継にあたっては、親から子へと会社を引き継ぐパターンが多いのですが、親子間だからこそ起こるトラブルがあることを忘れてはいけません。 中小企業白書による…

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