コロナショックは健全経営されていた会社ほど経営インパクトを受けやすい。(※写真はイメージです/PIXTA)

ドイツの大手フィンテック企業のワイヤーカード社が自社の不正会計から帳簿に載っていた手元資金の約2200億円が存在していないことが発覚して、同社は破綻となりました。5年間、企業の粉飾を見抜けなかった監査法人の人材不足が露呈しました。今後、監査法人はどうなるのでしょうか、国際投資アナリストが著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)で解説します。

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With・Withoutコロナを通じた今後の流れ

このセクションでは、この度の新型コロナウイルス感染拡大による直接的な変化とは必ずしも限らないものの、日本国内のみならず、一定程度世界的な動きとして、変化が見られていくであろう、いくつかのエリアについて紹介していきます。

 

■国際会計・ワイヤーカードから見る、優秀な人材が不足している産業
(国際的な専門職のニーズは依然好調か)

 

数年前にニュースで出ていた、英オックスフォード大学発表の、コンピューターなど自動化に、今後10年で取って代わられる仕事のリスト。その中には、所謂ブルーカラーに属するような単純労働も入っていますが、一方で所謂ホワイトワーカー(たとえば、銀行、弁護士事務所、会計事務所での勤務の方)にも影響がある、ということで、注目を浴びました。

 

国際会計の分野でも、ある程度の自動化ニーズがある一方で、優秀な人材を育成、確保し続けないと続かない業界でもある、と思わせる案件が2020年6月にありました。

 

ドイツの大手フィンテック企業であったワイヤーカード社(ドイツ株式市場の指数であるDAX30への組み入れられていた銘柄)が、自社の不正会計から帳簿に載っていた手元資金、約2200億円が存在していなかった、という事実が発覚し急転換が起き、同社は破綻となり、部門ごとに他社へ売却交渉に入ったのですが、まずは時系列で出来事をおさらいしようと思います。

 

2020年6月18日に、ワイヤーカードが監査法人ErnestYoung(EY)から19億ユーロ(約2200億円)の残高が確認できないと通告されたと発表し、資金消失疑惑が表面化しました。

 

翌日の6月19日にマークス・ブラウン最高経営責任者(CEO)が辞任を発表したが、同時に他の銀行と、融資継続について「建設的な協議」を実行しているとも発表しました。

 

6月21日にフィリピン中銀により、2019年にシンガポールからフィリピンの大手2行に移動されたと見られていた資金(19億ユーロ)が、同国の金融システムに入り込んだ事実はないと発表された。

 

6月22日にワイヤーカード社は、銀行の信託口座に資金が存在していなかった可能性が高いとし、2019年通期と20年1~3月の決算取り下げを発表しました。

 

6月23日に辞任したブラウン前CEOが、収益などを偽って株価を操作した疑いから逮捕されました。(その日に保釈金を払い保釈もされました)。

 

6月25日に同社が、破産手続きに入りました。

 

次ページ5年間、企業の粉飾を見抜けなかった監査法人

※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

最強の外資系資産運用術

最強の外資系資産運用術

後藤 康之

日本橋出版

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