役員賞与が損金扱いになる…中小企業が出しておくべき「届出」【税理士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

会社が潰れる本当の原因は、赤字や債務でなく「資金不足」です。資金不足に陥らないためには、助成金や補助金、借金などの様々な資金繰り手段はもちろんのこと、節税などによって手元のキャッシュを減らさない工夫も欠かせません。ここでは、資金繰り専門税理士が「税理士から教われない資金繰りテクニック」を公開します。

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「事前」に「届出」すれば、役員賞与も損金算入が可能

「役員賞与も損金にできたらいいのに…」

 

そう思ったら「事前確定届出給与に関する届出書」が有効。

 

「事前確定届出給与に関する届出書」は、役員に支給する賞与の支給時期と支給金額を明記して提出するもの。

 

まずは役員に支給するお金の基本を押さえておこう。会社が役員に支給するお金は、社員にとっての給与のような「役員報酬」と、ボーナスのような「役員賞与」がある。

 

この2つは似ているけれど大きな違いがある。それは、役員報酬は会社の損金(経費)になり、役員賞与は損金扱いにならないということ。

 

なぜ賞与は損金扱いにならないのか。その理由は、役員に賞与を支給することで、税金逃れのための利益調整ができてしまうから。

 

中小企業では社長の配偶者や親族が役員になっているケースが多い。つまり、身内でお金が回っている。その人たちにたくさん賞与を支給すれば、利益が多かった年の年度末(期末)に課税対象となる利益を減らすことができてしまう。それを防ぐために役員賞与は損金にできないようになっているわけ。

 

さて「事前確定届出給与に関する届出書」の話。

 

これを提出しておけば、記載した内容のとおりに賞与が支給された場合に、その賞与が「役員報酬」の扱いになり、損金に算入できるようになる。

 

税務署が気にする会社の利益調整は、決算直前に起きる。例えば、期末になって利益を見た社長が「今期は利益が多いから減らそう」などと考えて賞与を支給するケース。

 

しかし、あらかじめ賞与額を決めて税務署に報告する仕組みにしておけば、このような不正は防げる。だから「事前」に賞与を「確定」させて、「届出」した場合は、損金にしていいよ、というわけである。

この届出は「出したほうがいい」が…注意点も

会社としては損金算入が多いほうが節税効果は高まるため、この届け出は出したほうがいい。

 

例えば、役員の菅原太郎に500万円、同じく役員の菅原花子に300万円の報酬を支給することにして、届出を出しておく。これだけで期末に計800万円を経費として落とせる。これは大きい。「経費にできる」という選択肢ができ、「ああ、役員報酬をもっともらっておけばよかった…」といった後悔を防ぐことができる。

 

また、この届出が特徴的なのは、事前に届け出た金額と実際に支給した金額が完全に一致している場合のみ損金にできるという点。1円でも違うと損金にならない。菅原太郎に500万円と届け出て、実際に支給した金額が499万円だった場合、499万円が丸々損金にならないということ。

 

では、1円も支給しなかった場合はどうなるか。この場合は金額が一致しないため、支給する分が損金不算入になるのだが、支給額が0円なのでそもそも損金不算入になるものはない。

 

つまり、利益が出ている場合は届出のとおりに500万円と300万円の報酬を支給し、800万円の経費を作ることができると同時に、利益が出なかった時や資金繰りが厳しい時は、無理に支給せずに、手元の資金を残すことができる。

 

菅原太郎に500万円、菅原花子に300万円という内容で届け出たケースで考えると、4つのパターンが考えられる。

 

見込みどおりに利益が出たら、2人に賞与を支給して800万円の損金にする。

 

それほど利益が出ず、役員のどちらか1人が責任を取って賞与を放棄し、どちらか1人のみ賞与を支給し、500万円か300万円の損金にすることもできる。

 

全然利益が出ずに、資金繰りが厳しい場合は、2人とも0円にすることもできる。

 

このように役員2名なら会社の業績次第で4つのパターンが考えられ、決算着地をどうするかを決めることができるのである。

 

この届出は、株主総会などの決議日から1ヵ月以内か、事業年度が開始した日から4ヵ月以内に提出する。1日でも遅れると損金にできなくなるため、忘れずに提出しておこう。

この届出は「社会保険料の節約」としても活用可能

「事前確定届出給与に関する届出書」は役員と会社の社会保険料対策にもなる。

 

この届出を出しておくと、賞与を支給することで損金にすることができるが、業績や資金繰りが悪くなったら無理に支給しなくてもいい。

 

これだけでも便利だが、もう一つ別の活用ができる。それは、社会保険料の節約。役員が負担する社会保険料は、健康保険・介護保険料と厚生年金保険がある。これらは基本的には役員と会社が折半するため、社会保険料を抑えることができれば、役員も会社も負担金が軽くなる。

 

中小企業の社長の場合、実質的には社長の分と会社の分を両方負担しているため、社会保険料の削減は可処分所得(手取り)を増やすことになるとともに、会社の資金繰りを良くすることにもなる。

 

では、どうやって削減するか。

 

役員が払う保険料(健康保険、厚生年金保険)は、月々の報酬額によって決まる。報酬が多ければ多いほど保険料も高くなり、報酬の上限は、健康保険が月額135万5000円、厚生年金保険が63万5000円。賞与についても同じ。賞与として受け取った金額に保険料率をかけて保険料を計算するため、受け取る金額が多いほど保険料も高くなる。

 

ただし、役員報酬と比べて役員賞与は上限が低い。

 

賞与の上限は、健康保険が年度累計で573万円、厚生年金保険は1回の支給につき150万円なので、それ以上受け取ったとしても、保険料は増えない。

 

つまり、賞与が1000万円だったとすれば、健康保険は427万円(1000万円‒573万円)、厚生年金保険は850万円(1000万円‒150万円)が社会保険料の掛からない収入ということになる。

高所得者ほど「賞与でもらう分」を増やしたほうがお得

実際に計算してみよう。

 

月給100万円、年収1200万円の役員が、このお金をすべて役員報酬として受け取る場合の社会保険料はいくらになるか。月々の健康保険料は約10万円、厚生年金が約11万円となり、合計で年間約250万円の負担になる。

 

では、総額は変えずに、月々の報酬を5万円にして、残りを賞与で受け取るとどうなるか。5万円の報酬にかかる社会保険料は、健康保険料が月々約6000円で、厚生年金が1万6000円で、年間で約26万円になる。

 

残りの1140万円を賞与で受け取ると、健康保険料も厚生年金保険も前述した上限を超えるため、上限を超える分については社会保険料がかからなくなる。

 

金額は、健康保険料は56万円、厚生年金が27万円で、合計83万円。報酬にかかる分と合わせて110万円ほどになり、すべて報酬で受け取った場合と比べて140万円以上の削減になる。これは大きい。

 

このメリットを得るために、事前確定届出給与に関する届出書で、役員報酬として1140万円受け取る(会社としては支給する)ことを届けておけば良い。

 

【図表】役員報酬を賞与にした場合

 

ここで例にした金額設定は極端な例だが、収入が多い人ほど賞与でもらう分を増やしたほうが良いというポイントは分かってもらえるだろう。

 

「月額10万円では生活できない」

 

そういう場合は、一時的に会社からお金を借りればいい。例えば、月々90万円ずつ会社から借りて、月々の手取りは、月10万円の報酬と合わせて100万円になる。これなら生活費としてはおそらく十分だろう。

 

借りた分は賞与を受け取る時に精算すれば良い。借りた分には社会保険料がかからないため、社会保険料を削減できる効果は変わらない。

 

 

菅原 由一

SMGグループ CEO

SMG菅原経営株式会社 代表取締役

SMG税理士事務所 代表税理士

 

 

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SMGグループ CEO
SMG菅原経営株式会社 代表取締役
SMG税理士事務所 代表税理士 

1975年三重県生まれ。税理士。東京・名古屋・大阪・三重に拠点を置き、中小企業の資金繰りコンサルタントとして活躍。銀行が絶賛する独自資料の作成で赤字会社も含め融資実行率は95%以上。顧問先の黒字企業割合は85%を実現している。

これまで700本以上のセミナー講師を務め、7000名超の経営者が受講し、TV、専門誌、新聞、各メディアからの取材も多く、大手企業からの講演依頼も多数。

アメーバブログ「脱!税理士菅原のお金を増やす経営術!」は人気を博し、Ameba公式トップブロガーに認定。

前著に『会社の運命を変える究極の資金繰り』がある。

著者紹介

連載「キャッシュリッチ企業」になれ!激レア資金繰りテクニック

※本連載は、菅原由一氏の著書『激レア 資金繰りテクニック50』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

激レア 資金繰りテクニック50

激レア 資金繰りテクニック50

菅原 由一

幻冬舎メディアコンサルティング

受講者数は延べ7000人! 資金繰り専門税理士のセミナー講義内容をついに書籍化。 会社の生存力を高めるには、負債がないことや黒字経営であることよりも、手元に資金がいくらあるかということが重要です。 たとえ黒字経…

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