(※写真はイメージです/PIXTA)

医師であっても「高齢者の異常な言動=アルツハイマー型認知症」と思い込み、誤診することがあります。見極めのために患者としても知っておきたい、医師が持つべき診療スキルについて、医療法人昭友会・埼玉森林病院院長、認知症専門医の磯野浩氏が解説していきます。

何年もの間、不適切な治療に医療費を使う「ダメージ」

認知症のなかには原因を調べてもはっきりしないものもあり、可能性の高い疾患を想定し治療をしながら経過を見ることもありますが、いずれにせよ原因を調べもせずに「認知症です」で終わりにしては、的外れな治療になりかねません。

 

眠れないのをストレスによる一時的なものなのか、精神疾患が潜んでいるのか、体の病気のせいなのか、はたまた薬の副作用なのか、原因を調べもせず「不眠症ですね」でひとくくりにするのと同じです。

 

実際、このような中途半端な診断で、治療可能な認知症が見逃されてしまっており、かなり進んでから私のところに相談に来るというケースを、何度も経験しています。

 

確かに、認知症の6~7割はアルツハイマー型認知症です。しかし、だからといってその他のタイプの認知症を見逃していいわけはありません。

 

認知症は進行性の病気ですから、いずれ症状は悪くなってきます。そうなって手に負えないから、と当院のような基幹病院に来たときに、改めて診断して、別の精神疾患が見つかったり、アルツハイマー型認知症だと思っていたのがレビー小体型認知症だった、というケースが頻発しています。

 

それまでの数年間、適切とはいえない治療に対して医療費が使われていたわけで、本人にとっても家族にとっても、身体的、精神的、そして経済的なダメージははかりしれないのです。

 

自身を振り返ってみると、臨床医としてのキャリアのスタートが浴風会病院だったことはとても幸運であったと思います。そこで徹底して、患者の話に耳を傾け、よくコミュニケーションをとることを教え込まれました。

 

患者および家族から話を聞けば聞くほど、誰一人として同じではない、という至極当然なことを再確認させられました。成育歴も家族構成も性格も、生活の様子も……。認知症の症状は環境や人間関係によって出方が違いますから、いうなれば症状も誰一人として同じではないのです。

 

そう思えばますます「おかしな言動だから、認知症ね」などと言えないはずです。

次ページ患者として見極めたいのは、医師の「XXXへの感度」

※本連載は、磯野浩氏の著書『認知症診断の不都合な真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

認知症診断の不都合な真実

認知症診断の不都合な真実

磯野 浩

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会に突入した日本において、認知症はもはや国民病になりつつあります。そんななか、「認知症」という「誤診」の多発が問題視されています。 高齢者はさまざまな疾患を併せ持っているケースが多く、それらが関連しあ…

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