「相続税の税務調査」調査官は“いつ、なにを”見てやってくる?【税理士が解説】
要注意…名義預金となりやすい「3つの代表例」
相続税の申告をすると、2年後くらいに相続税の税務調査がやってくることがあります。
妻からすれば、「夫婦なのだから夫の収入もわたしのものだ」、あるいは「税務署にはどうせそこまでわからないでしょ」と思うかもしれません。
しかし税務署の方の考え方は、基本的には夫婦別産制です。財産は収入と紐づけされると考えています。また銀行で過去10年間の取引履歴をチェックすることができ、そこで不審に思われると調査が入るため、基本的にわかってしまいます。
「10年超えてるから心配ないでしょ」という方もいらっしゃいますが、金銭を取引したのは昔のことであっても、明らかに妻の財産が大きい場合には「このお金はどこからきたのか?」と聞かれます。
名義預金となりやすい代表例は下記の3つです。
●へそくり
●生活費のあまり
●夫婦間でごちゃごちゃになっている
まず「へそくり」として多いのは、夫の給料から少しずつ妻の口座に入金していたというケースです。
直接振り込みでもらっていたり、お小遣いを少し貯めていたりして、妻の名義になっていることがあります。
そして多くあるのが「生活費のあまり」です。
月30万円を夫からもらい、20万円で生活をやりくりして10万円あまったとします。そしてあまった10万円を、自分が頑張ってやりくりした分だからと自身の口座に入れる。そうしているうちに夫が亡くなった時には1000万円貯まっていた、というようなケースでは、妻名義の預金であっても相続財産といわれる可能性が高くなります。
さて、こんな事例があります。生前に口約束で夫から「生活費のあまりはあげるよ」といわれていたと主張して、税務署から名義預金とされたことについて、国税不服審判所で争ったケースです。
結果は、妻の負けでした。やはり、贈与契約書をつくりきちんと財産を移転しなければ、主張を通すのは難しいのです。
また、「夫婦間でお金がごちゃごちゃになっている」ケースもときどきあります。
夫婦だからと一緒くたにして生活している場合にも、妻名義の預貯金は相続財産と言われる可能性があります。この場合には、2人の過去の収入の比でお金を按分するなどして対応することが考えられます。