(写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、ニッセイ基礎研究所が公開したレポートを転載したものです。

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    見直しを巡る論点

    特定技能制度については、政府の裁量による部分が大きく、対象分野や技能試験の実施方法、年間の受け入れ人数などの決定は政府に委ねられる。

     

    従って、特定技能「2号」の対象業種拡大も、関係閣僚会議で分野別運用方針の見直しが行われ、省令や告示の改正をもって対応が進んでいくと見られる。その意味で今後の行方は、政府・与党内の議論がカギを握っていると言える。

     

    なお、今般の見直しの方向性については、過去の経緯からみれば、驚きは少ない。例えば、1993年に創設された技能実習制度は、在留期間が研修と技能実習を合わせて最長2年とされていたが、1997年に最長3年に延長され、2017年の技能実習法の改正を経て、最長5年まで延長されている。
    ※ 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律

     

    また、対象職種についても、17職種(1993年)から55職種(1999年)へ拡大し、累次の追加を経て、現在では85職種156作業まで拡大している。
    ※ 2021年3月時点。

     

    特定技能の創設目的が、人手不足分野における即戦力たる外国人材の受入れにあり、人口減少で働き手の減少が進む現状を踏まえれば、対象業種の拡大が検討されること自体は、ある程度予想された展開と言える。

     

    ただ、今般の業種拡大は、永住権の獲得にもつながる特定技能「2号」だという点が、これまでとは異なる。技能実習は、建前はどうあれ、短期的に労働者を受入れる制度であったが、特定技能「2号」は、長期的に外国人材を受入れる制度である点は、意識しておく必要があるだろう。

     

    一方で、永住権の取得は、長期滞在するだけで認められるものではない。例えば、永住権の取得には、

     

    (1)素行が善良であること(入管法違反や犯罪行為のほか、軽微な道路交通法違反も繰り返すと素行不良と判断される場合もある)、
    (2)独立生計要件を満たすこと(保有資産や年収などから安定した生活が営めることを証明すること)、
    (3)国益適合要件を満たすこと(10年以上の在留かつ5年以上の就労、納税や出入国管理など届け出義務の履行、最長の在留資格の保有、公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと、生活の基盤が日本にあること)

     

    などの要件を、すべて満たすことが求められる。

     

    特定技能「2号」では、これらのうち技能実習や特定技能「1号」では、算入の認められていない、5年以上の就労という要件を満たせることから、永住権の取得につながると考えられる。

     

    なお、永住権を取得すると、日本における無期限の滞在や、配偶者や子の帯同、職業選択の自由などが認められる(ただし、議論はあるものの、参政権は認められていない)。

     

    さらに、永住権の取得後に誕生した子には、永住者の配偶者等の資格が与えられ、特定技能「2号」取得者本人と同じく、職業選択の自由が認められる。特定技能「2号」の対象業種の拡大は、長期的に国の在り方にも影響を及ぼし得ることから、これまで以上に慎重な検討が必要とされる。

     

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    本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月23日に公開したレポートを転載したものです。

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