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本記事は、ニッセイ基礎研究所が公開したレポートを転載したものです。

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    はじめに

    2019年4月の「出入国管理及び難民認定法」(以降、改正入管法)施行から2年が経過した今年は、新たに創設された在留資格である、特定技能の見直しを行う時期にあたる。

     

    今般の見直しで特に注目されるのは、特定技能「2号」の扱いだ。現在、その対象業種拡大についての検討が進められている。ただ、永住権の取得や家族帯同も可能となる、特定技能「2号」の受入れ拡大は、移民政策や治安などへの懸念から異論もあり、どのような形で決着するか見通しづらい。

     

    本稿では、対象業種拡大の検討が進む特定技能について、制度創設後の状況を整理し、今後のポイントについて考えてみたい。

    特定技能の制度概要

    特定技能制度は、2018年12月8日の改正入管法の成立に伴い、2019年4月から創設された制度だ。

     

    同制度の意義は、「中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応」するため、「生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある」産業分野において、「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人」を受け入れていくことだとされる
    ※ 「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について」(2018年12月25日閣議決定)

     

    その特徴としては、日本人従業員と同等以上の待遇にすることが、受入れ企業に義務付けられたほか、同一の業務区分内であれば、転職も認められることなどが挙げられる。

     

    なお、混同されることも多い、技能実習制度との比較では、受入れ職種や在留期間などのほか、制度創設の目的や対象とする人材などにも違いがある。

     

    例えば、制度創設の目的については、技能実習制度が技術移転を通じた、発展途上国への国際貢献にある一方、特定技能制度は人手不足分野における、労働力の確保を目的としている。

     

    また、在留資格の取得要件においても、技能実習制度が介護職種を除いて、日本語能力試験などを課していないのに対して、特定技能制度は、日本語能力試験と技能試験の両方を要件としている。このことは、特定技能制度が、際立った専門性を有しているとまでは言えないまでも、相対的に高いスキルを有した人材を、受入れるための制度であることを示している。

     

    なお、特定技能には、技能水準に応じて、特定技能「1号」「2号」という2種類の在留資格がある。

     

    特定技能「1号」については、「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」であり、「特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる」人材に認められる。在留期間は、通算で上限5年。家族帯同は基本的に認められず、受入れ機関又は登録支援機関による支援が必要となる。

     

    特定技能「2号」については、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」であり、「現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する」レベルの人材に認められる。在留期間は、更新の必要はあるが上限はない。要件を満たせば家族帯同も可能であり、登録支援機関などによる支援も義務ではなくなる。

     

    2021年12月時点における特定技能「1号」の対象業種は、「介護分野」「ビルクリーニング分野」「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」「電気・電子情報関連産業分野」「建設分野」「造船・舶用工業分野」「自動車整備分野」「航空分野」「宿泊分野」「農業分野」「漁業分野」「飲食料品製造業分野」「外食業分野」の14分野。

     

    このうち特定技能「2号」への移行が可能なのは、「建設分野」「造船・舶用工業分野」の2分野だけである。今般の議論でとりわけ注目されるのは、この部分にあたる。
     

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    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月23日に公開したレポートを転載したものです。

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