(写真はイメージです/PIXTA)

「遺言代用信託」を活用すると、遺言書を作成せずとも指定された人に財産を引き継ぐことができます。本記事では、煩雑な相続手続きを回避できる「遺言代用信託」のメリット・デメリットについて、行政書士法人ストレートの大槻卓也行政書士が解説します。

「遺言代用信託」と「遺言信託」の違い

遺言代用信託と似ているものに遺言信託があります。

 

遺言信託とは…特定の者に対し財産の譲渡・担保権の設定その他の財産の処分をする旨、ならびに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理または処分およびその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法による信託のこと

 

このように遺言信託はあくまでも遺言です。民法で定められた厳格な方式を遵守しなければ無効になってしまいます。

 

これに対して遺言代用信託は契約なので、そのような規律はありません。また、遺言信託では遺言執行手続きが必要となります。そのための時間を要し、かつ遺言執行に際して利害関係人との間でトラブルが生じるリスクがあります。

 

これに対して遺言代用信託では、遺言執行手続きは不要となります。

相続税…受託者の死亡後に受益者が対象に

信託においては、信託財産に属する財産の引渡しやその他の信託財産に係る給付を受ける債権等を所有しているのが受益者であり、かつ信託財産から生ずる利益を受託者が享受することが認められないことから、納税義務は受益者が負うのが基本です。

 

もっとも、遺言代用信託は、契約締結時点では委託者と受益者が同一であることから、税法上財産の譲渡が生じず、課税されません。

 

委託者の死亡後に受益者が委託者から受益権を遺贈されたものとみなされ、相続税の対象となります。

遺言代用信託は「遺留分侵害額請求権」の対象になる

遺言代用信託は、生前行為によって自身の死亡後における財産分配を達成しようとするものです。死因贈与と機能が類似していることから、遺留分侵害額請求の対象になります。

 

したがって、将来における遺留分をめぐるトラブルを回避するために、他の相続人には別途、遺留分以上の財産を残すことを検討するといいでしょう。

まとめ

・遺言代用信託のメリットは被相続人の死亡後、煩雑な相続手続きを経なくとも自身の葬儀費用や配偶者の生活費などの費用を工面できること
・遺言代用信託のデメリットは信託できる財産が金銭のみで、契約の手数料がかかること
・遺言代用信託は契約なので、民法で定められた厳格な規律がない
・相続税は財産を引き継いでから発生する

 

 

大槻 卓也

行政書士法人ストレート 代表行政書士

 

 

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本記事は行政書士法人ストレートのコラムを転載したものです。

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