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在日外国人の配偶者が亡くなった場合の事例
■事例
長年日本に在住していたアメリカ人の夫が、先日亡くなりました。相続人は私と子供の2人ですが、日本にある不動産の相続はどのようにすればいいでしょうか。遺言はありませんでした。
このときに手続きのポイントになるのは被相続人の本国法の確認と以下の3つです。
- 相続にかかる身分関係等について公証役場で宣誓供述書を作成
- 相続人全員で遺産分割協議書を作成
- 必要な添付書類を添えて法務局に相続登記の申請
まずは、相続においてどの国の法律に基づいて行うべきか解説していきましょう。
国際相続の準拠法とは?
相続の準拠法は被相続人の本国法です。よって、この事例ではアメリカ法が準拠法となります。もっとも、アメリカは州により法律が異なる不統一法国です。なので本国法の確定は、その国の規則に従い指定される法、または、規則がないときは当事者に最も密接な関係のある地方の法によって行われます。
アメリカにはそのような規則はないとされています。そのため、アメリカ人の亡夫に最も密接な関係のある地方がどこであるかを検討(出生地・常居所地・過去の常居所地・親族の居住地などを考慮)しなければなりません。
ところで、相続の準拠法としては、主として英米法と大陸法で採用されている2つの立場があります。
■英米法と大陸法で採用されている2つの立場
・英米法では、不動産についてはその所在地法、動産については被相続人の死亡当時の住所地法を適用する「相続分割主義」
・大陸法では不動産と動産を区別せずに、両者をともに被相続人の属人法による「相続統一主義」
本事例でアメリカのある州の法が準拠法とされた場合、相続分割主義が採用されている可能性が高いため、不動産についてはその所在地法が適用されることになります。その結果、反致※により、日本にある不動産の相続については日本法が適用されることになるでしょう。
※ 反致とは? わかりやすく言うと、日本の法律で「本国の法律によるべきだ」としている場合に、外国側の法律で「日本の法律によるべきだ」とされていた場合は、日本の法律によってのみ処理することが認められることです。
ちなみに、中国でも動産については被相続人の住所地の法を適用し、不動産については不動産所在地の法を適用するので本事例と同じく日本法が適用されることになります。相続の準拠法はこのようにして決まり、原則として被相続人につき相続が開始してから終了するまでに生ずる問題のすべてに対して適用されます。
渉外相続の発生が多い韓国の相続法について
ここで、日本において渉外相続が生じることが多い韓国の相続法についてわかりやすく解説しましょう。
韓国の相続法は日本の相続法と類似しています。ただし、韓国での相続の順位は、第1に直系卑属、第2に直系尊属、第3に兄弟姉妹、第4に4親等以内の傍系血族です。配偶者は、被相続人の直系卑属と同順位で共同相続人直系卑属がいない場合には被相続人の直系尊属と同順位で共同相続人直系卑属も直系尊属もいない場合には単独相続となります。
遺産分割制度・相続の単純承認・放棄・限定承認・財産分離・相続人不存在などの制度は、日本の制度とほぼ同じです。
韓国の国際私法によると、相続の準拠法は被相続人の本国法となります。よって、反致の問題は起こらず、大韓民国民法が適用されます。
韓国には戸籍制度がありましたが、2008年1月から家族関係の登録等に関する法律が施行され、同時に戸籍法が廃止されています。従前の戸籍簿は除籍簿となっており、従来の戸籍謄本の代わりに家族関係登録簿の証明書があります。
在日韓国人の中には出生・婚姻・離婚等の身分事項の届出を日本の住所地の市区町村に行うだけで、韓国の戸籍にそれらの身分事項を申告していないケースが数多くあるようです。したがって、身分関係が本国の戸籍に正確に公示されていない可能性もあるため、注意が必要です。
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