海外先進国では使わない…日本の認知症抑制薬、全身への「恐ろしい副作用リスク」【専門医が解説】

海外先進国では使わない…日本の認知症抑制薬、全身への「恐ろしい副作用リスク」【専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症専門医の磯野浩氏は「薬を出すだけの認知症診療はお金と時間の無駄遣い」と語ります。医師は診療において、普段の生活のヒアリングを丁寧におこない、家族の悩みに寄り添うことを第一としなければなりません。十分に情報収集をせずにむやみに薬を処方すれば、深刻な副作用リスクも高まります。ここでは同氏が「認知症の進行抑制薬」について解説します。

海外では使われていない…どんな副作用リスクが?

例えば循環器なら徐脈性不整脈、呼吸器なら気管の収縮亢進によるぜんそく発作、消化器なら胃酸分泌の促進による消化性潰瘍、神経系ならパーキンソン症候群、また精神科系ではコリン作動系神経系が賦活されるために怒りっぽくなるなどの症状が挙げられます。

 

フランスでは2018年8月より、上記4種類の治療薬に対し、さまざまな副作用が懸念されるうえに、認知症進行抑制という期待される効果を示すエビデンス(科学的根拠)が十分に得られなかったとして、実質的に保険適用除外となっています。

 

フランスだけでなく、海外先進国ではこうした、全身において深刻な副作用リスクが高まる可能性のあるコリンエステラーゼ阻害薬は、できるだけ使わないよう方向転換しつつあります。

 

日本においても見直しが必要ではと私は考えています。少なくともドネペジルを伝家の宝刀のごとく安易に処方する診療は大いに疑問です。

 

薬は適切に使ってこそ薬になるのであり、使い方を間違えれば害になりかねません。それは副作用のデメリットばかりを被るという直接的なものだけでなく、別のアプローチをすれば効果的だったかもしれない可能性をつぶし、無駄に時間を費やしてしまうことによる害も含まれます。

 

例えば、アルツハイマー型認知症の中でも怒りっぽく、すぐ興奮して活発に動くなど、家族にとっては介護に手を焼くタイプでは、感情や行動を抑制する作用が期待できるメマンチンのほうが奏効しやすい場合もあります。

 

そしてこうした判断も、患者本人のみしか診ず、心理検査や画像検査だけで病状を把握しようとしているのでは的確にできません。家族からよく話を聞いて、家族が何に困っているのかをもとにする必要があるのです。

 

さらにいうならば、各薬剤は剤型や1日の服薬回数も異なりますので、薬を飲みたがらない人は1日1回のみの薬を、ほかの病気もあり経口薬が多い人は貼付薬を、と考慮することは、飲み忘れなどのないきちんとした服薬管理をしてもらううえで大切です。

 

可能な範囲で、ということになるとは思いますが、それにはやはり家族の介護状況や、本人が他の病気でも治療を受けていないかどうか、など、より広い情報収集をする必要があると考えます。

 

 

磯野浩

医療法人昭友会 埼玉森林病院 院長

※本連載は、磯野浩氏の著書『認知症診断の不都合な真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

認知症診断の不都合な真実

認知症診断の不都合な真実

磯野 浩

幻冬舎メディアコンサルティング

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