前回は、M&Aには余裕をもった事前準備が必要となることを説明しました。今回は、M&Aの成否に大きくかかわる「アドバイザー」の選び方について見ていきます。

社長の「分身」として交渉にあたるM&Aアドバイザー

M&Aで満足のいく結果を得るためにも、M&Aのコンサルティングにあたってくれるアドバイザーの見極め方、付き合い方について知っておく必要があります。

 

通常、中小企業のオーナー経営者がM&Aで会社を売るのは、生涯に一回きりということがほとんどです。豊富な経営経験や人生経験を有する人たちとはいえ、経験のないことに挑むわけですから、信頼がおける外部のアドバイザーを見つけ、パートナーとして活用していくことがM&A成功の秘訣になります。

 

M&Aのアドバイザーは「幸せを運ぶ青い鳥」です。オーナー社長の代理になって相性の良い買い手を探すだけでなく、金額や従業員の処遇をはじめとする希望条件を買い手に伝え、落とし所を作ってくれるのです。そういう意味で、アドバイザーはオーナー社長の分身です。売り手と買い手の直接交渉が禁止ということもあり、分身がどれだけ自社のために働いてくれるかが大切になってくるのです。

 

専任契約を結ぶまでは遠慮なくいろいろなアドバイザーの意見を聞き、自身との相性も確かめてみてください。そして、「ぜひこの人に」と思えるアドバイザーが見つかったら、腹を割って話し、アドバイザーを自らの懐に引きずり込めばよいでしょう。

 

後継者が不在でM&Aを検討する場合、多くのケースでは、アドバイザーはオーナー経営者より年下です。若いアドバイザーが「この人のためにぜひ良い成約をしたい」と意気に感じてくれるように、隠し事はせずにすべてを話すのがよいと思います。まずは信頼がおけて自社のために誠実に動いてくれそうなアドバイザーをパートナーに選ぶ。そのことが基本になります。

M&Aの成約数よりも成約率に着目

さて、いくら相性が良いアドバイザーでも、買い手探しや交渉の経験が豊富でなければ、良いマッチングを行うことはできません。

 

M&Aが企業間の「お見合い結婚」なら、アドバイザーはいわば「仲人」役です。売り手と買い手の双方を結び付ける縁結びの専門家です。結婚の場合、結婚を望む人は仲人に相談をし、仲人は釣書を用意したうえでふさわしそうな相手を考え、結婚話を持ち込みます。そのとき、売り手の魅力をアピールする話術や話の持ち込み先がどれだけあるかで、成約つまり結婚というゴールに至る数や割合は変わってきます。

 

数は少ないけれども着実に、高い割合で成約まで導いてくれる仲人さんもいれば、世話好きで顔が広くいろいろな仲介を頻繁に行っているせいで成約件数は多いけれども率でいうと低くなる人もいます。

本連載は、2013年9月20日刊行の書籍『会社を息子に継がせるな』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

会社を息子に継がせるな

会社を息子に継がせるな

畠 嘉伸

幻冬舎メディアコンサルティング

現在、9割の中小企業経営者が後継者不在という問題を抱えています。息子がいない、いても“家業"に興味を示さない、あるいはオーナー社長が手塩にかけてきた会社を任せられるほどの才気がない。だからといって、廃業を選んでし…

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