前回は、地方企業のM&Aの場合、地域密着のアドバイザーが有利な理由を説明しました。今回は、地域密着型M&Aアドバイザーの「成約率」が高い理由をさらに詳しく見ていきます。

買い手候補に関するデータは「量」より「質」

第3回で、大手のアドバイザーについて説明しました。そういった大手は、通常、多くの買い手候補のリストを抱えています。独立系のM&Aコンサルティング会社だけでなく、銀行系、証券会社系などのM&Aコンサルティング会社も同様で、1万件を超える数が登録されていることもあります。

 

ただ、それらの買い手企業のデータは所在が全国にわたるだけでなく、M&Aコンサルティング会社との関係が希薄な会社も含まれてのものです。数のうえでは優位でも、質となるとどうかという問題があります。

 

また仮に石川県の水産加工品会社が売り手になる場合、諸般の事情を考慮した結果、同一エリアの同業種の企業が望ましそうとなった場合、1万件のデータに該当候補がどれだけあるかという問題にもなります。1万件のデータがあっても、北陸地方は数パーセントで、水産品加工業ではさらに絞り込まれる・・・これではマッチングは難しいでしょうし、無理に他エリアとのマッチングを模索しても、ハッピーになれるかは未知数です。

地域密着型アドバイザーは企業と”濃い”つながりを持つ

その点、地域密着型のアドバイザーが有する買い手リストは、やはり地域に密着しているばかりか、一般に登録企業との関係も深いものがあります。さらに、普段から事業コンサルティングや経営支援で接点がある場合もあります。

 

売り手と買い手の双方の顔だけでなく事情も知っているアドバイザーがいて、双方の代理を兼ねてくれる。そんな関係性があれば、たとえ持っている買い手リストの件数が少なくても、質はかなり高く、その分成約の可能性が高まるともいえます。

 

地域密着でありつつ、全国にも目配りができる。そのようなアドバイザーを選んで付き合うことができればM&Aの成功は近づき、豊かな老後資金の確保にもつながるはずです。

 

本連載は、2013年9月20日刊行の書籍『会社を息子に継がせるな』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

会社を息子に継がせるな

会社を息子に継がせるな

畠 嘉伸

幻冬舎メディアコンサルティング

現在、9割の中小企業経営者が後継者不在という問題を抱えています。息子がいない、いても“家業"に興味を示さない、あるいはオーナー社長が手塩にかけてきた会社を任せられるほどの才気がない。だからといって、廃業を選んでし…

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