前回は、M&Aの成否に大きくかかわる「アドバイザー」の選び方について説明しました。今回も引き続き、「アドバイザー」をどのように選ぶべきか、具体的な方法について見ていきます。

成約率を「口ごもる」ようでは失格

地方の会社を売買するときは、経験上、数よりも割合(成約率)が大切と感じています。少数精鋭、地域密着で地元のことをよくわかったアドバイザーについてもらうほうが、単に成約の確率が上がるだけでなく、望んだ条件に近いゴールを得られることが多いと感じます。

 

手前味噌ですが、当社では創業から北陸地方の会社を中心に160件以上の成約例があり、成約率(業務委託契約を結び、着手金が発生した会社がM&Aに成功した確率)は約90%です。

 

一方、大手のアドバイザー会社の例では公表数値で年間約数百件の業務委託契約を結ぶものの、成約件数は平均数件ほどという例もあります。ホームページなどで公表していますし、聞かれれば教えるのが普通です。

 

万一、そこで口を濁すようではその時点で失格。依頼は止めたほうがよいです。

抱える案件が多すぎる場合も避けたほうが無難

アドバイザー一人が抱える案件の数もポイントです。当社では自分自身も含めて、アドバイザー一人に付き最大で5件、平均して3~5件の案件しか持たせません。少数精鋭で、着実に成約に導くことを優先しているからです。

 

一方、大手の会社では一人のアドバイザーが20件以上も担当案件を持つことも普通にあります。仮に20件を平等に面倒を見るとすると、土日を除いた平日は月に二十数日しかなく、一日1社の面談なら、依頼している売り手としては直接会って話せるのは月に1回になってしまいます。

 

これでは、仮に成約できるにしても時間がかかって仕方がありません。

アドバイザーの変更をしたほうが早いケースも

かつて、石川県のある塗装業の売り手の会社と建設業の買い手の会社の仲を取り持ったことがあります。当社では業務委託契約を結んでから成約に至る平均期間は半年ほどですが、このケースはそれよりも早い134日でした。

 

売り手のオーナー社長は、実はその前の2年間、東京の大手コンサルティング会社にM&Aの依頼をし、業務委託契約を結んでいたのでした。ところが、担当アドバイザーが石川まで足を運んでくれるのは「月イチ」でしかなく、一向に話が進まなかったというのです。

 

M&Aの交渉は秘密保持のうえ売り手と買い手の直接交渉禁止が基本ですから、大事なことは膝を突き合わせて直接に話す必要があります。電話やメールだけでは、微妙なニュアンスが伝わらないことも多いのです。

 

痺れを切らしたオーナー社長が、アドバイザーを当社に乗り換え、それからは4カ月強の間に無事成約に至れたということです。

本連載は、2013年9月20日刊行の書籍『会社を息子に継がせるな』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

会社を息子に継がせるな

会社を息子に継がせるな

畠 嘉伸

幻冬舎メディアコンサルティング

現在、9割の中小企業経営者が後継者不在という問題を抱えています。息子がいない、いても“家業"に興味を示さない、あるいはオーナー社長が手塩にかけてきた会社を任せられるほどの才気がない。だからといって、廃業を選んでし…

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