前回は、プライベートカンパニー設立のメリットとデメリットについて解説しました。今回は、「管理方式」「サブリース方式」に分類されるプライベートカンパニーの概要を見ていきます。

管理収入から所得を分配する「管理方式」

相続対策におけるプライベートカンパニーには大きく分けて、四つの類型があります。
第一は「管理方式」です(図表1)。プライベートカンパニーが管理収入を得て、親族に役員報酬として所得を分配するというものです。

     [図表1]

アパートなど土地建物は被相続人(親)の所有のままで、入居者やテナントの契約も被相続人との間で結びます。相続人(子など)が役員となるプライベートカンパニーが土地建物の管理を受託し、賃料の受け取りなども所有者である被相続人に代わって行います。

 

こうやって土地建物の収益の一部を、管理報酬としてプライベートカンパニーに移し、役員である相続人(子)に給与として分配するわけです。ところが、実体もないのに家賃収入の数十%もの管理報酬を得ることが問題視され、今ではあまり利用されなくなりました。

 

外部の管理会社に任せる場合は家賃の5%前後が相場です。プライベートカンパニーでも、せいぜい8%くらいまでが限度でしょう。プライベートカンパニーからさらに外部に再委託する場合、5%支払ったとしたら残りは3%しかありません。仮に月収が100万円としても、払える役員報酬は総額のたった3万円では、実質的に所得分散にはなりません。

一棟ごとに借り上げる「サブリース方式」

第二は、「サブリース方式」です(図表2)。

  [図表2]

 

アパートなど土地建物は被相続人(親)が所有したままですが、それをプライベートカンパニーに定額で一括して貸します。プライベートカンパニーは、借り上げた土地建物を入居者やテナントに又貸しし、賃料を受け取ります。

 

こうして、賃料収入を相続人(子など)である役員に分配するのです。「管理方式」との違いは、一棟ごとに一括してプライベートカンパニーが借り上げ、空室のリスクを負う点にあります。したがって報酬のリターンも大きくなるのです。一般的に外部のサブリース会社は、エンドユーザーからの賃料と借上賃料の差として15%程度を見込んでいます。

 

プライベートカンパニーでは賃料の20%くらいまでを差額の利益として得るのが限界でしょう。それでも管理方式よりは所得の移転効果が大きく、一定の効果が見込めます。もちろん、思ったより空室が増えたり、賃料の引き下げを行わざるを得なくなれば、プライベートカンパニーの利益は減り、赤字になることもあります。

 

法人にリスクが移った分、個人(所有者)のリスクが減るわけで、法人と個人が同族であればトータルのリスクは変わりません。ただ、このサブリース方式は、家賃収入が大きい場合には今でも有効です。

本連載は、2015年9月19日刊行の書籍『余命一カ月の相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
〈税務の取扱に関する留意点〉
本連載の内容は、平成28年7月現在の税制・関係法令等に基づき記載しております。今後の税制改正等により税務の取扱等が変わる場合もありますので、記載の内容につきましては将来にわたって保証されるものではないことにご注意ください。個別の税務取扱い等については、税理士や所轄税務署等にご確認されることをお勧めします。

余命一カ月の相続税対策

余命一カ月の相続税対策

福田 郁雄,木村 祐司

幻冬舎メディアコンサルティング

突然やってくる“その時”、わずかな時間でできる対策は限られています。しかし、正しいノウハウをもってすれば、相続税対策は2週間程度で完了、相続税をゼロにでき、それどころか、子孫に受け継いだ資産がその後も増え続けて…

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