前回は、プライベートカンパニーの「資金調達方法」について解説しました。今回は、法人設立で相続と事業承継の悩みを同時に解決した事例を見ていきます。

プライベートカンパニーを設立したF氏のケース

横浜市のFさんは20年前にIT系企業を創業。今では会社の純資産が10億円にまで成長しました。

 

「ただ、60歳を過ぎてそろそろ相続対策と事業承継のことが気になり始めて……。事業は親族以外に引き継いでもらおうと考えているのですが、今のところ株価が高いため株式の移転ができず、このままいくと相続税ばかりかかってしまいます。どうしたものか頭を悩ませていました」

 

推定相続人は配偶者と子どもが3人です。相談を受け、財産診断を行ったところ、確かに相続税額は3億円、配偶者控除の適用後でも約1億5000万円になることが判明しました。

 

こうした場合、よくあるのは役員退職金の支払いや収益不動産等の購入によって自社株の評価額を下げ、事業を継がせたい幹部社員(複数のこともある)に株式を売却するといった方法です。

「持株会社化」や「会社分割」などの手法も活用可能

しかし、取引先の手前、Fさんが代表取締役を退くことは難しく、また取引金融機関との関係上、一時的にせよ自社株の評価を下げることは躊躇されました。そこで、相続対策の観点からはプライベートカンパニーを設立し、収益不動産を借入金で購入。

 

また、事業承継の観点からプライベートカンパニーを持ち株会社としました。その上で数年後、このプライベートカンパニーからFさんは役員退職金を受け取って、株式を相続人に生前贈与。同時に、本業の会社の株式を承継者に買い取ってもらう予定にしています。

 

プライベートカンパニーの活用では、持ち株会社化や会社分割といった方法を組み合わせることで、様々なケースに対応できる可能性が広がります。

本連載は、2015年9月19日刊行の書籍『余命一カ月の相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
〈税務の取扱に関する留意点〉
本連載の内容は、平成28年7月現在の税制・関係法令等に基づき記載しております。今後の税制改正等により税務の取扱等が変わる場合もありますので、記載の内容につきましては将来にわたって保証されるものではないことにご注意ください。個別の税務取扱い等については、税理士や所轄税務署等にご確認されることをお勧めします。

余命一カ月の相続税対策

余命一カ月の相続税対策

福田 郁雄,木村 祐司

幻冬舎メディアコンサルティング

突然やってくる“その時”、わずかな時間でできる対策は限られています。しかし、正しいノウハウをもってすれば、相続税対策は2週間程度で完了、相続税をゼロにでき、それどころか、子孫に受け継いだ資産がその後も増え続けて…

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